ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

千円の壁

2023年11月20日 | 其の他

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拉麺倒産激増 過去最多ペース ~聳え立つ『千の壁』」(11月19日付け東京新聞[朝刊])

拉麺店の店仕舞いが増えている。材料費や人件費高騰しているが、飲食の他業界に比べ、価格転嫁が難しいと言う。俗に言う千円の壁。長く国民食として親しまれて来ただけに、此の壁を越えると、客足途絶える。」という不文律だ。、上質な食材を用いる拉麺店も数多く存在し、世界的な物価高は暫く収束を見込めそうも無い。壁は打破されるのか。

「素材の味に妥協せず、出来る限りの値段で遣って来た。でも、もう・・・。」。

東京都板橋区の「無添加らぁ麺奏」の男性店主(40歳)は溜め
吐く店頭には、「今月26日で閉店します。」の貼り紙。店名の通り、スープの鶏や麺の小麦、卵や醤油に到るオーガニックで通して来た。そんな拉麺は、1杯900円。「此れ以上になると、高いと言われてしまうので。」。

東京商工リサーチの調査によると、今年8月迄に倒産した拉麺店が全国で28件に上り、前年で3.5倍と激増此のペース推移すれば、過去15年間で最多の年間42件に達する可能性も在る。資本金1,000万円未満、従業員5人未満が共に9割で、零細規模の店が目立っている。業界関係者は、「個人商店の閉店、都市部での複数店舗の縮小を含めれば、店仕舞いの件数はもっと多い。食材高騰の他、アルバイトの人手不足も深刻。コロナの営業自粛尾を引いている。」と明かす。 

拉麺の原価率が一般的に30~35%とされる中、の男性の店では4割に達していた。野菜や味の核心となる調味料が高騰し、水道光熱費の負担も増していたが、「消費者が納得しない。」といい、値上げの選択肢を取らずに閉店を決めた。「矛盾するが、厳選した品を適正価格で食べて欲しい思いと同時に、色んな御客さんに来て貰いたい思いも強かった。大衆食で在る事が、拉麺の魅力なので。」。

此の「壁」は、何時から言われ始めたのか。拉麺専門誌等には、2010年頃から度々登場する様になる。年間700杯を平らげ、開店・閉店情報を発信する拉麺評論家山本剛志さんは、「ブランド食材や無添加食品を用いる店が登場し、一部のトップランナーの店主達が語り始めた。」と話す。其の後はトリュフ鱶鰭等を盛り込み、1杯数千円の高級拉麺も少しずつ増えて来ている。

然し、出店のハードルが比較的低く、競合が激しい拉麺業界では「依然として、店主の壁への恐怖心は根強い。」と言う。同じく大衆食と位置付けられる牛丼や咖哩等と比べて、個人店が圧倒的に多く、他店に影響を与えるプライス・リーダーが存在しない。為だ。一方、主に都市部に点在しているキャッシュレス専門店では、1,000円台の価格の拉麺も好評博している。「庶民性のイメージは、心理的に左右される面も在る。『千円札の壁』とも言えるかも知れない。」。

多くの個人店にとって、壁は今後も聳え立ち続けるのか。山本さんは、「値上げの告知文は、謝罪文の様な形になってしまっている。現状経済政策では、消費マインド喚起は望めず、客離れに恐怖心を抱く拉麺店主は矢張り、値上げに二の足を踏むだろう。」と見通し、こう続けた。

「最終的には、経営者が壁を前向きに崩して行くというより、諸経費の上昇に耐えられず、壁の内側に押し込まれる様になってしまうのではないか。」。
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確かに近場でも、閉店した拉麺店を良く見掛ける。閉店しなくても、営業時間を大幅に短縮した拉麺店も。其の一方で、「拉麺店の跡地に、居抜きで新しい拉麺店がオープン。」というケースも珍しく無く、「此れが、連続で4度繰り返された。」というのも在った。元記事に在る様に、「出店のハードルが比較的低い。」という事が、背景に在るのだろう。

そんな複雑な環境に在る拉麺店、確かに「千円の壁」というのは存在すると思う。もう30年以上前になるが、有名拉麺チェーン店で1杯千数百円の拉麺を食べた事が在る。具材に高級肉を使用した物で、確かにとても美味しかった。でも、食べたのは、其の1回限り。「どんなに美味しくても、拉麺に千数百円は払いたくない。」という思いがどうしても在り、「“話の種”として1回食べたら、もう充分。」と感じたので。

其れから随分時は経ったが、「千円の壁」というのは自分の中に厳然と存在する。(「どんなに高級で美味しかろうと、食パンに高額を払いたくない。」という思いが在るので、昨今の“高級食パン衰退”には「当然だろうな。」と思うし。)自分の周りでも同じ様な捉え方の人は少なく無いので、「拉麺店の経営は大変だろうな。」という同情心も。

此方の情報によると、我が国の拉麺1杯の平均価格推移は「48.5円(1962年)→211円(1975年)→437円(1989年)→515円(1998年)→594円(2010年)」との事。1962年から1989年の27年間で約9.01倍になっているが、1989年から2010年の21年間では約1.35倍しか上がっていない訳だ。仮に今「1杯千円の拉麺」だったとしても、34年間で約2.28倍だから、過ぎ去った年数を考えると“馬鹿高い”という事では決して無いのだろうが、「拉麺=国民食=安価」というイメージからすると、どうしても「高い。」と感じてしまうのだろう。


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