AERAでタレントの小島慶子さんは「小島慶子の幸福のススメ!」というコラムを連載されているのだが、3月19日号は「ワクチンと検診で『子宮頸癌撲滅』目指す豪州」というタイトルで、ヒトパピローマウイルス・ワクチン(HPVワクチン)を取り上げていた。
彼女は家族の居るオーストラリアと日本との往復の日々を送っているが、其のオーストラリアに関して「国際パピローマウイルス学会(IPVS)」が或る声明を出したそうだ。
「オーストラリアは、世界で初めて子宮頸癌を撲滅する国になるかもしれない。」。
オーストラリアでは2007年から、「学校に於けるHPVワクチンの無料接種プログラム」が開始された。当初は12~13歳の女子が対象で、2013年からは男子にも拡大。其れ以外の年齢でも19歳未満ならば、2回の無料接種が受けられるのだとか。
HPVは、子宮頸癌や尖圭コンジローマの原因となる極在り触れたウイルスで、セックスによって感染する。なので、女性だけで無く男性にもワクチンを接種する事で、より感染者を減らせると言う。
2016年の調査では、オーストラリアの15歳女子の78.6%、同男子の72.9%が接種済み。此のプログラムが実施された事により、2005~2015年の10年間で、18~24歳の女性のHPV感染率は22.7%から1.1%に迄激減したそうだ。
オーストラリア政府は、25~74歳の女性に子宮頸癌の新たな定期健診制度の導入を決定。ワクチン開発者の1人で在るクイーンズランド大学のイアン・フレイザー教授は、「定期健診とワクチン無料接種との併用で、10~20年以内には新症例は無くなるで在ろう。」と述べている。
小池さんの長男も、8年生(中2)の時に学校でワクチンの無料接種を、3回に分けて受けたそうだ。
「此のプログラムが実施された事により、2005~2015年の10年間で、18~24歳の女性のHPV感染率は22.7%から1.1%に激減した。」と元記事には記されていたが、無料接種対象年齢でも未接種の人が居る(約3割?)様なので、「1.1%」という結果なのだろう。そう考えると、皆が接種を受ければ「零」になる可能性も。
古くはZARDの坂井和泉さんも、子宮頸癌で闘病していた。HPVワクチンで子宮頸癌が撲滅出来れば、其れは良い話なのだが・・・。
非常に気になる点が在る。我が国でも嘗てHPVワクチン接種が国の助成事業となり、2013年4月からは小学6年~高校1年迄を対象にした定期接種となっていた。然し、HPVワクチン接種者から健康被害を訴える声が相次いだ事から、厚労省は同年6月より、積極的に接種を勧める事を控えている。
厚労省の調査結果によると、HPVワクチンの販売開始から2014年11月迄に同ワクチンを接種した女性は約338万人で、其の内、2,584人(約0.07%)から健康被害の訴えが在り、未回復が186人(約0.005%)、死亡したケースが3件(約0.00008%)在ったとか。副作用の主な症状としては、頭痛や倦怠感、関節痛、筋力低下等。全身の痙攣や歩行障害、脳の障害といった重症例も少なく無いと言う。
全体から言えば副作用発生率「約0.07%」というのは少ないのかもしれないが、発生した人からすると「問題無いと信じて接種したのに、酷い話だ。」となるだろう。HPVワクチン接種を声高に訴えていた某有名女性議員なんぞは、副作用を訴える声が上がり始めると、具体的に何も言う事無く、逃げ回っているのだから酷い。(副作用が起こるなんて思ってもいなかったのだろうから、彼女に責任を押し付ける気は無いが、少なくとも「知らなかったとはいえ、申し訳無かった。」位の事は言うべきだろう。普段から、あんなにも偉そうな事を主張しているのだから。)
オーストラリアでは、副作用の問題は発生していないのだろうか?
これは相当に難しい問題を含んでいますね。
仮に10万人に1人の割合で重篤な副作用が出る薬があったとして、たまたまその1人に当たってしまった人にとっては「冗談じゃない」となるわけだし。
しかし、誤解を恐れず私なりの結論を言ってしまえば、その1人の危険のために10万人-1人の救済をあきらめるべきではない。
もちろん強制するのは論外だとしても、リスクよりも効果の方がはるかに高いなら、積極的に奨励すべきだと思います。
なぜこんな「暴論」を言うのかといえば、医学をはじめ科学は万能ではないし、人間のすることに完璧は無いからです。
従って、人間の作り出す薬にも副作用の無い完璧な薬などないし、80億人いても一人として同じ指紋が無いのと同じように、薬の効き方もそれぞれ違いがあって当たり前、ただリスクをどこまで許容できるか、その1点だけだと思うのです。
私には先天性の心臓病がありました。1/1000の割合、つまり1000人に1人はこの病気を持っているとの事でした。
この病気が日本でも広く知られるようになって、内科手術で治せるようになり、私がその手術を受けたときのリスクは95%の成功率だと言われました。
それから20年余り経ち、今では98%まで成功率があがっているそうですが、まだ100%ではありません。
術後の精密検査で造影剤を服用してのCTR検査を受ける際、その造影剤の副作用について説明を受けましたが、1/1万人に蕁麻疹の副作用が出る、1/10万人には重篤な状態になるリスクがあると言われ、実際私は1/1万人の部類に入ってしまいました。
それまでアレルギーに全く縁がなかっただけにショックでしたが・・・。
でも、失敗が5%もあるからと手術をあきらめたり、1/1万や1/10万のリスクがあるからと精密検査を回避していたら、ひょっとして今の自分があったかどうか。
最終的には個々人が判断するべきことでしょうが、数万分の1のリスクを恐れて、助けられたかもしれない命をみすみす傍観してしまうのは愚かなことだと思うのです。
もちろん、医学界、製薬会社、国が徹底してリスクを回避する努力を怠らない、という大前提があってのことですが。
難しい問題では在りますね。「飛行機で事故に遭う確率は、自動車の事故に遭う確率と比べると、遥かに低い。」と、良く言われます。仮に飛行機に搭乗して事故に遭う確率が「3千万分の1」としますと、「そんな低い確率なのか。」と普通は思います。でも、実際に飛行機事故に遭った人からすれば「1分の1」、即ち「100%」となる。ワクチン接種で副作用が出る確率が低くても、実際に出た人からすると同じく「100%」。決して軽んじられる事では無い。
でも、物事に100%の成功というのは中々無く、医学の進歩の為には犠牲が付き物というのも現実として在る。
仰る様に「医学界、製薬会社、国が徹底してリスクを回避する努力を怠らない。」という大前提がキープされるので在れば、止むを得ない面も・・・とは言え、自分や近しい人間が健康被害に在ったら・・・難しいですね。