ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「怒り」

2014年03月16日 | 書籍関連

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八王子郊外新興住宅地「けやきの丘」に建つ一戸建てで、尾木幸則(おぎ ゆきのり)&里佳子(りかこ)夫妻が惨殺された事件から1年後の夏。房総漁港で暮らす槙洋平(まき ようへい)&愛子(あいこ)親子の前に田代哲也(たしろ てつや)と称する男が現われ、大手企業に勤めるゲイの藤田優馬(ふじた ゆうま)は新宿サウナで大西直人(おおにし なおと)と称する男と出逢い、母・小宮山真由(こみやま まゆ)と沖縄離島波照間島へ引っ越した女子高生・泉(いずみ)は田中(たなか)と称する男と知り合う。

 

其れ其れ前歴不詳の3人の男達。惨殺現場に残された「怒」の血文字。整形をして逃亡を続ける犯人・山神一也(やまがみ かずや)は、一体何処居るのか?

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芥川賞作家吉田修一氏の小説怒り」。「殺人を犯した後、整形をして逃亡を続ける。」、「残されたメモから、犯人がゲイの可能性が浮上し、CGで作成された女装の指名手配写真が公開された。」、「犯人は、異様に鋭い一重の目をしている。」等、7年前に発生した「リンゼイ・アン・ホーカーさん殺害事件」の犯人を思わせる内容。

 

前歴不詳の3人の男が登場し、全てが“怪しさ”を有している。「田代哲也」、「藤田優馬」、「小宮山泉」、そして山神一也を追う巡査部長「北見壮介(きたみ そうすけ)」という4人の視点から状況が記されて行くのだが、彼等が得る“新情報”に、読者は「彼奴が犯人と思っていたんだけど、此奴の方が怪しくなって来たな。」と、何度も振り回される事だろう。

 

上&下巻併せて5百を超える長編だが、宮部(みゆき)作品の様な冗漫さが無く、ぐいぐいとストーリーの中に引き込まれて行った。人の持つ「怖さ」や「優しさ」、「弱さ」等を感じ、「遣り切れない哀しみ」に共鳴

 

総合評価は、星4つとする。


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6 コメント

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うわ! (AK)
2014-03-16 14:47:49
ザ・吉田路線ですね。
漁港・肉体労働or体育会青年・ゲイ・怪しいエリート?・何か犯罪、わー吉田ワールド!
(悪人ではゲイの部分が「出会い系」)
「悪人」には引き込まれました。映画は見てなくって、妻夫木は良い俳優と思いますが、綺麗過ぎるから、綾野剛のほうがはまるんじゃないかな、と思いました。
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>AK様 (giants-55)
2014-03-16 23:35:01
書き込み有難う御座いました。

実は吉田修一氏の作品で読了したのは、今回の「怒り」が初めてでした。「平成猿蟹合戦図」も図書館で借りたものの、読んでて余り気乗りがせず、途中で断念したものですから。

作品リストを確認すると、映画化される等、見覚えの在る物が幾つか在り、「悪人」も其の1つでした。
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Unknown (マヌケ)
2014-03-17 12:56:04
「悪人」は地方のすさんだ描き方がきつすぎて、地方に住む若者の未来に暗いモノしか感じられませんでした。 それにあまりにも簡単に人の命を奪い、どうにもならないところまで追い詰められるまでズルズル悪あがきをして、これが今の時代のダメな若者の一つのステレオタイプなのだろうかとその時は思いましたが、今、現実にたまたま見つけた女子高生をはした金のために首を絞めて殺してしまう事件などを考えますに、こんなもんかもしれないとあらためて思い起こしてしまいました。 人を殺して逃げおおせるとか、なかったことにできるとか、あり得ない、未熟さ、人間のダメさ加減がとてもうまく描かれていましたが。 犯罪に走る人や走ってしまった人の習性なのでしょうか。 「パーク・ライフ」や「さよなら渓谷」「横道世の助」などがおすすめです。 あと、「元職員」という作品は角田光代さんの「紙の月」とほぼ同じようなストーリーです。 それから「春バーニーズで」は確かにゲイです。 ご紹介いただいた作品は書店で見かけまして、そのうちそのうちと思っていたところです。 これを機に読みたいと思います。 どうもです。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2014-03-18 00:40:50
書き込み有難う御座いました。

「絶対にしてはいけない事」と「しても許される事」というのの“一般的な”境界線が非常に曖昧になって来ているというか、「しても許される事」側へどんどん拡大して来ている面も在る様に感じています。自分が学生だった頃にも、宿題等で他者の“成果”を写したりした事は在ったけれど(此れは此れで、許される事でも無いとは思いますが。)、でも“良心の呵責”と申しましょうか、「其の儘全部写すのは良く無いな。」という思いが心の何処かに在り、一部を自分形に改変したりしていた。

でも、昨今は読書感想文や論文をも、他者のを全文丸写しするケースが増えているとは聞いていたのですが、こんなのは凡庸な連中だけで在り、能力の高い人は例外と思っていたのですが・・・。

今話題の中心の方が、「“コピペ”をするのが、悪い事とは思っていなかった。」と釈明しているという話が在り、もし此れが事実ならば、「勉強面では非常に優秀も、社会人としては余りにも幼稚。」と言わざるを得ず、非常に残念な思いが。

話は一寸逸れてしまいましたが、他の吉田作品も面白そうですね。機会を見付け、読んでみたいと思います。
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Unknown (マヌケ)
2014-08-17 17:04:28
沖縄でのラストが、このような物語の閉じ方は、映画でもよくありますし、はっきりさせないままなのも一つの手法ではあると思いながら釈然としませんでした。 ただ、少年の少女をかばう気持ちなど純粋でやるせなさとともに、少年なりの正義のために人を刺した行為と、理由といえる理由もなく人を刺殺した犯人の最後のからみが、これはこれで一つの終わり方だろうと納得はできました。 今年の夏も沖縄で数日を過ごしましたが、沖縄の悲しみや苦しみなどわかってもらえない、通じない人たちに何を言っても無駄なのだというくだりをひしひしと感じました。 自分自身部外者ながら。 民宿で戦争の体験を真剣にお客さんたちに話す少年の父親の姿や、被爆経験を語るご老人に死にぞこないという暴言を吐いた学生のことなど、思い出しますと気持ちが沈んでしまいますね。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2014-08-18 02:32:32
書き込み有難う御座いました。

内館牧子さんだったと思うのですが、昔、ひめゆり平和祈念資料館を訪れた際の話を書いておられました。若くして亡くなられた女生徒達の写真を目にし、遣り切れない思いになっていた所、女子高生の集団が騒ぎ乍ら入館して来たそうです。其れだけでもどうかと思うのに、写真を目にするや「うわー、不細工!」、「変な顔!」等の暴言を吐き、ケラケラ笑っていたとか。引率する教師も注意しないどころか、一緒になって笑っていたのを目にして、憤りを覚えたと書いておられました。

常識の無さも然る事乍ら、自分が彼女達の立場だったら・・・そういう相続力が余りにも欠如しているのでしょうね。過去の歴史を真剣に学び、そして教訓としている若人も少なからず居ると信じていますが、逆にアホとしか言い様の無い者も増えている。戦没者の犠牲の上に、今の日本が在る事を、もっと真摯に捉えて欲しいものです。
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