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大阪で活動する3人組女性地下アイドル「ベイビー★スターライト」は、様々な問題を抱えて危機的な状況に在った。尊大な事務所社長、グループ内での人気格差、恋人から暴力を受けているセンター。其の様な中で、"ベビスタ"は更に大きな問題に見舞われる。メンバーの1人が、事務所で人を殺してしまったのだ。彼女の罪を隠蔽する為、3人は死体を山中に埋める事を決意して・・・。
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第22回(2023年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で文庫グランプリを受賞した小説「推しの殺人」(著者:遠藤かたる氏)は、大阪発の地下アイドル「ベイビー★スターライト」の3人が主人公。地下アイドルとは「マス・メディアへの露出よりも、ライヴ等を中心に活動するアイドル。」の事で、大概は一般的な知名度が皆無に等しい。そんな地下アイドルの中でも、ベイビー★スターライトは中の下のランク。グループ内の関係は最悪で、年長のリーダー・ルイ(20歳で"小母さん"と呼ばれてしまうアイドルの世界に在って、彼女は今年23歳と微妙な年齢と成る。)は目標も持てない儘、惰性で活動を続けていて、引退の二文字が念頭にちらついている。前のセンターだったテルマは歌もダンスも上手で、パフォーマンスはグループ一だったが、歌もダンスも自分より劣る新入りのイズミにセンターの座を奪われ、彼女に対して激しいライヴァル心を持っている。そして、イズミは目鼻立ちのはっきりした顔にすらりとした身体で、大阪の一等地に住み、名門の御嬢様大学に通う等、誰しもが羨む様な存在なのだが、実は大きな問題を抱えていた。
殺人事件を起こしてしまったイズミの罪を隠蔽すべく、3人が死体を山中に埋めた事で、3人の仲は深まって行く。結果的にアイドル活動にも力が入り、其の輝きを増して行くのだから、何とも皮肉な話だ。
「アラ還の自分の元同級生は非常に堅い職業に就いているのだが、10数年以上前から某アイドル・グループに入れ揚げている。」と以前にも書いたが、今も其の状況は変わっていない様だ。個人的には全く理解出来ないのだけれど、他の元同級生の中にも"彼程の熱量"では無いにしても、自分の子供とアイドルのライヴに行ったり、応援したりしている者が何人か居るのだから、"アイドル好きの中高年"というのは、今や決して珍しくは無いのだろう。「周りからどう思われ様が、他人様に迷惑を掛けな範囲で、当人達が楽しければ、其れは其れで結構な事。」と、自分は考えている。
そんな彼等から、地下アイドルの話を聞いた事が在るので、「推しの殺人」の世界にはスッと入って行けたのだが、肝心なストーリーが駄目。「アイドルを続けたい。」という気持ちが非常に強かったとしても、だからと言って「無関係な殺人の隠蔽工作を手助けする2人」というのが理解出来ないし、「其の事で3人の結束力が増して行く。」というのは、実に安直な設定だと思う。
又、彼女達の隠蔽工作は結果的に"2人の人物"に見抜かれてしまうのだが、見抜いた理由が「説得力を欠く。」感じがしてならなかった。もう少し詳しく理由が記されていたならば、違った感じを持ったかも知れないが、サラッと記されていたので「何だかなあ・・・・。」という思いが。
3人を助け様とする或る人物の人間性のは意外性を感じたけれど、他には驚かされる部分が全く無く、物足り無さを感じてしまった。
総合評価は、星2.5個とする。