ステーショナリー・ショップを営んでいる知人が居るのだが、「尋常では無い忙しさから、漸と解放された。」とのメールが届いた。年度末及び年度始めという事で、例年、3月~4月は忙しいのだが、今年は「4月1日」から消費税アップという事で、其の対応も加わり、忙殺されていたと言う。
商品1つ1つの値札を貼り替えるというのは、個人経営の店にとって如何に大変な事か。来年10月には更に消費税アップが予定されており(無知蒙昧な指導者の事、形式に固執して、予定通りアップすると自分は思っている。)、「又、今回の様な作業をしなければいけないかと思うと、もううんざりしている。」という彼の言葉には、心から頷ける物が在る。消費税アップに悩まされているのは、消費者だけでは無いのだ。
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「消費税8% 車椅子メーカー悲鳴 製品非課税 材料は増税」(3月31日付け東京新聞【夕刊】)
消費税の増税で、車椅子メーカーが窮地に立たされている。車椅子は消費税の非課税品目で、利用者は消費税を払わずに買えるが、メーカーは原材料の仕入れに掛かった消費税を自社で被っており、増税で負担が膨らんでしまう為だ。東海地方は自動車部品製造の技術を転用した車椅子メーカーが多く、全国シェアの3分の2を占める。しかし、負担増で「生産の海外移転が広がる。」と悲鳴が上がっている。
「本当に頭が痛い。消費税が上がるのは、死活問題。」と訴えるのは、国内市場で25%のトップ・シェアを誇る車椅子メーカー、日進医療器(愛知県北名古屋市)の松永圭司社長だ。同社の車椅子は、ソチ冬季パラリンピックのチェアスキーでメダリストの7割が使う等、技術力で世界をリードする。
車椅子メーカーは原材料のタイヤやアルミ・パイプ等を購入する際に消費税を支払うが、完成品が非課税の為、仕入れ段階で被った税負担の分だけ、利益は減ってしまう。日進医療器の場合、此の負担は年1億円に上る。消費税率が8%になれば1億6千万円、10%に上がれば2億円迄膨らむ。同社の営業利益は3億円で、経営が大きく圧迫されるのは確実だ。
厚生労働省は「仕入れに掛かった消費税分は、価格に転嫁出来る。」と説明するが、利用する身体障害者や高齢者への配慮も在り、大半のメーカーが価格に上乗せせずに販売する。松永社長も「単なる値上げは出来ない。」と、当面は価格を据え置く方針だ。
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便乗値上げをしている所は論外だが、多くのメーカーや店舗は、消費税アップによる消費の冷え込みを懸念し、「消費者の3%負担増」に悩んでいたと思う。日進医療器の様に価格を据え置き、アップ分は自らが被るという所も、中小を中心に少なからず在ると聞くし。
4月1日の記事「5%→8%」で記したが、国民にはどんどん重荷を背負わせる一方で、「自らも身を切る。」という国民との約束を放置し、無駄としか思えない事柄に血税を大盤振る舞いしている政治家や官僚。其れでも尚、「仕方無い。」と多くの国民が“従順な羊”で在るのだから、他国からすれば嘸や奇異に感じる事だろう。
しかし少子化傾向(シェアを持つ地域で、毎年1校分の児童数減)に加え8%、10%の消費税となると、いつまでもこのまま続けるわけにも行かないでしょう。
といって、今まで消費税をサービスしてきたのに、それを販売価格に乗せると便乗値上げに見られてしまいそうで、すんなり受け入れられるかどうか。
販売先が公立校や役所なので連鎖倒産の心配は無いとはいえ、従業員20人程度の零細企業には、ホント死活問題です。
中小企業や個人経営の店の場合、幾ら「御上の決めた事だから。」と言って、消費税アップ分を其の儘請求してしまうと、売り上げが落ち込んでしまう可能性が在るし、何よりも「便乗値上げだ。」と謂れの無い勘繰りをされてしまい、挙句の果てに、長期に亘って築き上げて来た御客との信頼関係をも損ねてしまう不安も在りで、結局は自らが被るという選択をしている所も在るでしょうね。
社会的に弱い立場に在る人達の“救済”に当てる筈が、実態は全く無関係な無駄にも費やされる事が在っては絶対にならないし、其れ以前に、消費増税によって更なる負担をしなければならない中小企業や個人経営の店が増えたとしたら、弱者虐めと言われても仕方無い。
「市井の者達は、御上の決めた事を黙って受け容れていれば良いのだ。」という特権意識が、政治家や官僚からは感じられる。自らの身を切る姿勢が見られれば未だしも、集票の為に地元への利益誘導(其れも無駄としか思えない物)に汲々としている政治家や、天下り先を次々に生み出している官僚に、真面目に生きている国民は、ケツの毛迄毟り取られている現実。
海外では政府や官僚の好い加減さに抗議する国民、其れも若者達の姿がニュースで報じられている一方、我が国は“飼い慣らされた羊”許りになっている。此れ迄生きて来た期間を考えると、残りの期間の方が短いで在ろう自分ですらこんなに憤りを感じているというのに、此れからの期間の方が遥かに長く、重荷をどんどん背負い込み、そして戦争が起こったら真っ先に召集される若人の少なからずが、余りに問題意識が希薄なのは哀しい。