ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「みんなの少年探偵団」

2015年01月15日 | 書籍関連

中高年以上の方ならば、「少年探偵団」という言葉に、何とも言えない懐かしさを覚える方が結構居られるだろう。子供の頃、小説で読んだり、ラジオ・ドラマテレヴィ・ドラマ視聴したりと、触れた形は其れ其れ異なるだろうが、「小高い丘に建つ怪しげな洋館」や「原っぱに設置されたサーカス小屋」、「潜入任務を得意とする“ポケット小僧”」、「青銅の魔人宇宙怪人等に変装する怪人二十面相(四十面相)」等、脳裏に強く焼き付いている事柄は少なく無いだ。斯く言う自分も「少年探偵団シリーズ」が大好きで、小学生の頃は黴臭い学校の図書館でシリーズを次々に借り、家で夢中になって読んだもの。

 

「少年探偵団シリーズ」を著し小説家江戸川乱歩氏が生まれたのは、1894年10月21日の事。「1894年」と言えば、日清戦争勃発した年で、其れを思うと“大昔”という感じが在る。昨年、即ち「2014年」は「江戸川乱歩氏生誕120周年」に当たるという事で、昨年の11月、「少年探偵団シリーズ」を刊行しているポプラ社が、「みんなの少年探偵団」という本を刊行した。

 

万城目学氏、湊かなえさん、小路幸也氏、向井湘吾氏、そして藤谷治氏という5人の小説家が、「少年探偵団」を題材に著した5つの短編小説集。何の作品からも少年探偵団と怪人二十面相(四十面相)に対する深い愛情が感じられる、実に豪華な“オマージュアンソロジー”で在る。

 

 

「表紙の絵を見て、此の本を買ってしまった。」という声が、ネット上で散見された。自分も、そんな1人。子供の頃に読んだ「少年探偵団シリーズ」と重なり合う、懐かしい表紙絵だからだ。江戸川作品に深い愛情を持つ小説家に、「少年探偵団シリーズ」の“続編”を書かせたという事も併せ編集者の“企画の勝利”だと思う。

 

藤谷氏の「解散二十面相」は、パロディー調の作品。「少年探偵団シリーズ」と言えば、「読者諸君」とか「嗚呼、何という事でしょう。」、「~ではありますまいか。」等、独特な言い回しが特徴だが、そういった部分も上手く“パロって”いる。「怪人二十面相(四十面相)が何故、あんなに奇抜な変装や手口で、盗みを働いていたのか?」、明智小五郎探偵の口から語られる“推測”は、中々興味深い。

 

万城目氏の「永遠」、湊さんの「少女探偵団」、そして向井氏の「指数」は、昔読んだ「少年探偵団シリーズ」の“香り”が漂っており、実に懐かしかった。又、小向氏の「東京の探偵たち」は、昭和21年に13歳だった(と、此の作品では記されている。)団長・小林芳雄の28年後が描かれている。小林少年も41歳の中年となった訳だが、其の美形と抜群推理力は変わっていないし、老いたとは言え、明智探偵も未だ活躍している(本人は登場しないが。)というのが、ファンとしては非常に嬉しい。

 

兎に角、“企画の勝利”というのを強く感じる1冊。「少年探偵団シリーズ」に胸を熱くした人達ならば、読んで損は無いだろう。総合評価は、星4つとする。


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