正式名称は「故意四球」。「投手が打者に対し、意図的に四球を与える行為。」を指し、一般的には「敬遠」という名称の方が知られているだろう。
日本球界で最も多く四球を食らったのは王貞治氏の427個で、次いで張本勲氏の228個、長嶋茂雄氏の205個。四球を多く食らっているというのは、大打者の証とも言える。
敬遠を巡っては過去に、様々なドラマが在った。リアル・タイムでは見ていないけれど、1968年5月11日の対ドラゴンズ戦で、2死2塁の場面で打席に入った長嶋茂雄選手は、2ボールになるとバットを持たずに打席に入り直した。ドラゴンズが敬遠指示を出した事に抗議する“無言の行為”だったが、其れでも相手投手は四球を与えたと言う。
「敬遠を意図した投球を、安打にしてしまった例。」も、過去には在る。長嶋氏も在った様だが、自分の場合はウォーレン・クロマティ選手【動画】と新庄剛志選手【動画】のケースが、強く印象に残っている。ジャイアンツ・ファンなので、クロマティ選手の場合は「良く打った!」と喜び、新庄選手の場合は「打たれるなよ!」と悔しく思った物だが、何方の場合も打った選手には“らしさ”が感じられ、笑ってしまったのも事実。
チームを勝たせる為に、敬遠という選択肢は「在り。」だと考えている。でも、だからと言って、程度問題では在る。アマチュアの世界で言えば「松井秀喜選手への5打席連続敬遠」【動画】、プロの世界では「松永浩美選手への10打席連続敬遠」【動画】や「ランディ・バース選手への敬遠攻め」等は遣り過ぎだし、「自チームの選手にタイトルを取らせる為だけに、他チームの選手に対して執拗に敬遠を命じる。」というのは、気持ちは判らないでも無いけれど、プロ野球の魅力を減じさせる行為だろう。
*********************************
「米大リーグ 1球も投げない敬遠ルール等変更発表」(3月3日、日刊スポーツ)
MLB(大リーグ機構)と選手会が2日(日本時間3日)、ルール変更を発表。敬遠四球に付いては今季から、投球せずにベンチからの合図で可能になる事が決まった。
他に「監督が審判にヴィデオ判定を要求するかどうかの時間制限を、30秒以内とする。」等が決まった。
ストライク・ゾーンを膝頭の下部から上部に引き上げるルール変更も話し合われたが、合意に到らなかった。
*********************************
「メジャー・リーグでは今季から、投球せずともベンチからの合図だけで敬遠四球となる。」というのは、エポックメーキングなルール変更と言えるだろう。「敬遠が目的なら、投手に投げさせる事無く、合図だけにした方が時間短縮に繋がる。」という考えからなのだろうし、投手の側からすれば「“無駄な投球”をしないで済み、肩への負担を少なく出来る。」というメリットが。
一方で、「今回のルール変更により、クロマティ選手や新庄選手の様なドラマが見られなくなる。」という反対の声も在るだろう。
「誤審を避けるべく、全面的に機械判定にすべきだ。」という考えには反対している自分。全面的に機械判定にすれば、確かに誤審は無くなるかもしれない。でも、そうなったら、何とも無機的な感じで面白くないから。極論を言ってしまえば、「プロ野球にとって、誤審もスパイスの1つ。」だと思う。
そんな自分だが、今回のルール変更に関しては賛成。確かにクロマティ選手等の様なドラマは生まれなくなるけれど、長いプロ野球の歴史の中で、そんなドラマが生まれたのはコンマ1%も無いだろう。敬遠が目的ならば、無駄な投球で投手の肩への負担を減らした方が良いし、無意味な時間を短縮出来るのも悪い事では無い。
唯、気になる事も在る。合図によって敬遠と見做された投球数を、当該投手の投球回数に加えるかどうかに付いて。実際に投げてはいないのだから、理屈としては「加えるべきでは無い。」のだろうけれど・・・。