*********************************
高校生の心中事件。2人が死んだ場所の名を取って、其れは「恋累(こいがさね)心中」と呼ばれた。週刊深層編集部の都留正毅(つる まさたけ)は、フリー・ジャーナリストの太刀洗万智(たちあらい まち)と合流して取材を開始するが、徐々に事件の在り様に違和感を覚え始める。
太刀洗は、何を考えているのか?滑稽な悲劇、或いはグロテスクな妄執。己の身に痛みを引き受け乍ら、其れ等を直視するジャーナリスト、太刀洗万智の活動記録。
*********************************
米澤穂信氏の「真実の10メートル手前」は、表題の「真実の10メートル手前」を始めとした、6つの短編小説から構成されており、冒頭の梗概は「恋累心中」の物で在る。
近年のミステリー・ランキングでは、上位に作品が選ばれ続けている米澤氏。「週刊文春ミステリーベスト10」及び「このミステリーがすごい!」に関して言えば、2014年度は「満願」、そして昨年度は「王とサーカス」と、彼の作品が2年連続で1位に輝いている。
2006年に刊行された「さよなら妖精」で初登場した太刀洗万智。当時は女子高生だった彼女が、其の後、「王とサーカス」ではフリーのジャーナリストとして登場する。そして今回の「真実の10メートル手前」で3度目の登場を果たす訳だが、「真実の10メートル手前」ではフリーのジャーナリストになる前、即ち新聞記者だった頃の彼女が描かれている。残りの5作品は、ジャーナリストになって以降の彼女だ。
ミステリーに登場する“探偵(役)”と言えば、個性的なキャラクターの持ち主が多い。太刀洗もそういうタイプで、感情面での起伏が見え難い。イメージで言えば、壇蜜さんの様な感じか。
そんな太刀洗は、普通の人間なら見逃してしまいそうな事柄に注目し、目的不明な質問をする。目的不明では在るけれど、質問された相手にとっては、グサッと心に突き刺さる物だったり。其の事で太刀洗自身も傷付いている様では在るのだが、“事件”が変わったら、又、何時もの太刀洗に戻っている。不思議なキャラクターだ。
肝心な謎解きで言えば、そんなに驚く様な物では無い。「太刀洗の内面を、もっと掘り下げて描いて欲しい。」という不満足さも在る。
総合評価は、星3つ。