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顔には豹柄模様の刺青がびっしりと彫られ、左手は義手。菊池正弘(きくち まさひろ)が営む居酒屋「菊屋」に、古い友人で刑務所を出所した許りの片桐達夫(かたぎり たつお)が現れた。嘗て此の店で傷害事件を起こしてから、自身の妻とも離婚し、32年もの間に何度も犯罪に手を染めて来た男だ。獣の様な雰囲気は人を怯えさせ、刺青に隠された表情からは、本心が全く掴めない。何故、彼は罪を重ねるのか?
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薬丸岳氏の小説「ラストナイト」に登場する片桐達夫は、32年前に傷害事件を起こして以降、25年以上も刑務所を出たり入ったりしている。豹柄模様の刺青を顔に掘り込み、左手は義手という彼が、次々と犯罪に手を染める理由が、ストーリーの展開と共に明らかになって行く。
プロローグとエピローグの他に、5つの章から構成されている。「菊池正弘」や「中村尚」等、章は全て人名。章が変わる毎、章に付された名前の人物の視点に切り替わる。此の事で、登場済みの人物達の新たな人間関係が効果的に認識させられる。
刑務所では真面目に過ごし、顔の刺青さえ無ければ、社会に出ても極普通の生活を送れそうな片桐。実際、彼の事を気に掛けてくれる人達が、社会には何人か居る。なのに、犯罪を繰り返してしまう。其の理由が明らかとなり、そして“彼が選んだ結末”を迎えた時、遣り切れない思いになった。
良くも悪くも、TVドラマ的な作品。総合評価は、星3つとする。