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贈収賄事件を追っていた城東署の強行犯捜査係長・葛木邦彦(かつらぎ くにひこ)と、警察庁のキャリア組である邦彦の息子・俊史(としふみ)の父子。然し、後一歩の所で黒幕の国会議員が射殺され、真相は闇に葬り去られてしまう。警察に政治家から様々な圧力が掛かる中、城東署管内で轢き逃げ事件が起こる。目撃者の証言により、事件は直ぐに解決する筈だったが、容疑者が大物衆議院議員の息子と判明。捜査は又もや警察vs.政治の様相を呈して来て・・・。
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笹本稜平氏の小説「最終標的 所轄魂」は、「所轄魂シリーズ」の第5弾。同シリーズは第1弾「所轄魂」(総合評価:星4つ)と第2弾「失踪都市 所轄魂」(総合評価:星4.5個)を読了しており、今回の作品が3冊目となる。
共に警察官だが、父・葛木邦彦は叩き上げ、そして息子・俊史はエリートという違いが在る。捜査1課に籍を置く刑事の邦彦は、家庭を顧みずに日々捜査に当たる中、妻をクモ膜下出血で失ってしまう。こういう状況だと「家庭を顧みず、母を病死させてしまった父に猛反発する息子。」というのが良く在る設定だが、俊史は「正義感が強く、直向きに捜査に当たる邦彦。」を尊敬している。父子の関係性には心和む物が在り、読み進めて行くと、どんどん感情移入してしまう。(昔好きだった漫画「おやこ刑事」も、そんな感じだったが。)
「大物政治家の馬鹿息子が罪を犯した容疑が浮かび、警察は捜査に当たるものの、大物政治家から次々と警察に圧力が掛かり、捜査は何度もピンチを迎える。」というのは良く在る設定だが、此の作品でのピンチの回数は半端無い。二転三転どころか“四転”、“五転”、“六転”という感じで、「どういう形で終わるのだろうか?」という思いが。
そういう意味で面白い作品では在るのだが、読了した2作品と比べると物足り無さを感じる部分も。「“警察内部の悪”を、もっと強烈に出した方が、ストーリー的には良かったのかも。」と。
総合評価は、星3.5個とする。