ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「海を破る者」

2024年10月01日 | 書籍関連

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何故、人と人は争わねばならないのか?日本史上最大の危機で在る元寇に、没落御家人御家復興に立つ。

嘗て源頼朝から、「北条次ぐ。」と言われた伊予名門河野家然し、一族の内紛により、今は見る影も無く、没落していた。現在の当主河野六郎通有(こうの ろくろう みちあり)も、一族の惣領の地位を巡り伯父通時(みちとき)と争う事を余儀無くされていた。

然しそんな、海の向こうから侵攻して来るという知らせが齎される。今は、一族で骨肉の争いに明け暮れている場合では無い。通有は、ばらばらになった河野家を纏め上げ、元を迎え撃つべく、九州に向かうが・・・。
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今村翔吾氏の歴史小説海を破る者」を読了

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元寇日本鎌倉時代中期の1274年及び1281年に、モンゴル帝国元朝)及び属国高麗によって、2度に亘り行われた対日本侵攻。蒙古襲来とも呼ばれる。1度目を文永の役、2度目を弘安の役と言う。

弘安の役に於て日本へ派遣された艦隊は、当時世界最大規模の艦隊だった。
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日本が鎌倉時代だった頃、世界で最大&最強の国家だった元は、力を以て領土の拡大を図っていた。自分達に従わない者は殺戮する元によって、支配に置かれる国家&国民が次々と増えて行く中、元がターゲットに定めたのは日本。歴史の教科書でも取り上げられている「元寇」で、元による2度の侵攻は、日本史上最大の危機と言って良い。

余りにも有名な元寇に対し、執権として迎え撃った北条時宗の事はまあ知られていても、実際に戦地で戦った者達の事を詳しく知る人は少ないだろう。斯く言う自分もそんな1人で、河野六郎通有の名前は知っていたが、詳しい人物像は知らなかったし。そういう意味でも、彼に着目し、主人公に据えた今村氏の慧眼は素晴らしい

嘗ては源頼朝から高く評価され、伊予の名門として扱われていた河野家だが、“1人の女”を巡る内紛によって没落状態に在る。祖父と伯父、そして父が繰り広げる骨肉の争いに虚しさを感じていた通有が、元によって国を追われた2人の“異人”と巡り合い、彼等と触れ合う中で人としても成長して行き、元寇によってを立てた事で河野氏中興と呼ばれる様になった訳だが、単なる“人殺し”に走らなかった事は注目に値するだろう。

互いに不信感を持ち、啀み合う間柄で在っても、何かの切っ掛けによって“心を開く関係”になる事も在る。此の作品では、其の切っ掛けが1人の女性、其れも異人だった。

文覚西行は、元武士僧侶武蔵坊弁慶僧兵だし、“武士の顔を持つ”というのは珍しく無いのだが、踊り念仏」で知られる一遍が元武士、其れも河野家の一族だったというのを、今回初めて知った。

読み応えの在る作品だが、惜しむらくは“元寇以降の通有の生き方”が、実質的には描かれていない事。彼が其の後にどういう日々を送り、そして亡くなったのか?又、恐らくは架空の人物だろうから、“其の後”に付いて書かれなかったのだろうけれど、通有と別れた後の2人の異人に付いても、描いて欲しかった。

総合評価は、星3.5個


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