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「東大、秋入学移行へ 入試は春、5年後目指す」(1月18日付け東京新聞【夕刊】)
入学時期の在り方を検討している東大(濱田純一学長)の懇談会が、学部の春入学の廃止と秋入学への全面移行を積極的に検討すべきだとの中間報告を纏めた。*1入試日程は現行の時期を維持するのが妥当としている。欧米で一般的な秋入学に合わせ、国際化推進を目指すのが狙い。実現すれば経済界や他大学にも大きな影響が在りそうだ。
中間報告は20日に正式発表する。懇談会は今後、最終報告を纏め、学内の各部局で検討を続ける。高校や経済界から意見を募り、他大学にも検討を呼び掛ける。早ければ5年後の導入を目指すが、内部に異論も在り、結論が出る迄には曲折も予想される。
中間報告では、社会・経済のグローバル化が進み、大学でも国際的な競争が活発になっている中、学生の海外留学や外国人留学生の受け入れの制約になっている現行の春入学から秋入学への移行といった改革が必要だと指摘した。
懇談会の試案では、秋に入学する迄の半年間に、ヴォランティアやインターンシップ(就業体験)、国際交流といった体験活動をする事を想定。多様な体験を通じて、大学で学ぶ目的意識を明確にする効果が期待出来ると言う。
就学期間中も留学する等して、4年半から5年掛けての卒業をイメージ。成績が優秀な学生の早期卒業や大学院への早期進学等柔軟な対応も求められるとしている。
一方で、秋入学を導入した場合「(1)国内企業や官公庁が4月に新卒者を採用する雇用慣行から外れ、就職が困難になる恐れが在る。」、「(2)学生の負担が増える。」等のデメリットも在ると指摘。企業が採用時期に柔軟に対応するといった、社会的な支援が必要だとしている。
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「良くも悪くも我が国では、東大の影響力は強い。」という現実が在る。東大の懇談会が「(東大では)学部の春入学の廃止と秋入学への全面移行を積極的に検討すべき。」との中間報告を纏めたというだけで、マスメディアでは此の件を大きく報じているのだから。
「『死刑制度廃止』は、世界的な主流で在る。故に、日本も死刑制度を廃止すべきだ。」という主張が在る。確かに「世界的に主流になっている事柄」の中には、見習うべき物も在るだろう。だがしかし、「世界的に主流になっている事柄は“全て正しく”、だから日本も従うべきだ。」という主張には反対。例え日本の在る出来事が世界的には少数派で在ったとしても、其れが正しいと考えられるならば、断固として死守すべきだろう。では、今回の「秋入学」に付いてはどうだろうか?
昨日の報道で初めて知ったのだが、嘗ては日本でも「秋入学」が普通だったのだとか。明治維新以降、「列強各国に追い付け、追い越せ。」をスローガンにしていた我が国では、欧米諸国で主流だった「秋入学」を導入。しかし「陸軍が入隊の届出開始を9月から4月に早めた事により、『優秀な人材が陸軍に獲られてしまう。』と学校側が危惧した。」、「国の会計年度が4月に変わってしまい、県や国から補助金を貰っている学校としては、4月の入学に変更せざるを得なかった。」等の理由から、「春入学」へと切り替わったと言う。現在、「春入学」が一般化している国は少数派(インドやパキスタン、ペルー等。)と言われているが、其れでも3割位は在る様だ。
良い人材の獲得&育成という観点から言えば「春入学」よりは、世界的に主流な「秋入学」の方が良いのかもしれない。しかし、元記事でも触れている様なデメリットも考慮する必要が在るだろう。東大のみが「秋入学」に変更しても、他の制度が現行の儘で在れば、東大生が受ける不利益は少なくなさそうだから。「入試から入学迄の約半年間、そして卒業から進学乃至就職する迄の約半年間と、他大学の生徒とは併せて約1年間多くの月日が“差”として出る。」訳で、此の差で生じる金銭面の負担だけでも馬鹿にならないし。
「桜が咲き乱れる中、入学式に向かう。」という光景が普通だった自分からすると、「秋入学」というのは正直違和感を覚える。しかし「国際的な競争力を付ける。」という点では、「秋入学」も悪くは無いと思っている。唯、「秋入学」にするので在れば東大だけでは無く、幼稚園や小学校、中学校、大学、大学院等々、“学び舎”全てを「秋入学」にし、入試時期も其れに合わせて、夏場に変更する必要が在るだろう。
以前より、「入試時期が1~2月というのは、変えた方が良い。」と思っている。「降雪等の影響で、入試会場入りするのが大変だった。」という自身の経験からだ。受験生の健康管理という点でも、冬場の入試よりも夏場の入試の方が良い様に思うし。(そうでもないか?)
其処で皆様にズバリ聞きます!「貴方は、『秋入学』をどう考えますか?」。
春入学は、長い間日本で行っていて、日本の習慣、制度、その他あらゆる分野にしっかり根付いています。日本人にとって都合が悪ければ、とっくに変わっていたでしょう。
欧米にとっては、秋入学がいいのでしょう。しかし、なんでも欧米の基準に合わせる必要はないでしょう。
「死刑制度の是非」と同様、此の件も色々な御考えが在って然るべきで、「正解」という物が無い話。
雫石様の「何でも欧米の基準に合わせる必要は無い。」というのは全く同感だし、マヌケ様の書かれている「知日派を育成する等の面では、『秋入学』に賛成。」というのも「其の通り。」と感じます。
要は“流行り”に惑わされる事無く、「日本にとって最善の形は何なのか?」を広く&深く検討し、そして結論を出して欲しいという事。拙速な改革からは、益よりも害の方が多く生まれ勝ちなので。