記憶違いで無ければ、有栖川有栖氏の作品を読むのは今回が初めて。ミステリー作家として“大御所”的存在で在り、年間ミステリー・ランキングの常連でも在るので、当然乍ら御名前やどういう作品を著されているかは存じ上げていたが、何故か其の作品を読まない儘で在った。
とは言え、彼の作品を読んだ事は無かったけれど、原作を基にしたドラマは見た事が在る。「臨床犯罪学者 火村英生の推理」が其れで、「作家アリス・シリーズ」を原作としている。「探偵役で在る犯罪学者・火村英生(ひむら ひでお)と、ワトソン役の推理作家・有栖川有栖(ありすがわ ありす)が、事件の謎を解いて行く。」というスタイル。
此のコンビが初登場したのは1992年なので、昨年で25年を迎えた事になる。今回読んだ「狩人の悪夢」は同シリーズの(恐らく)第27弾で、「2018本格ミステリ・ベスト10【国内編】」の第2位、「2017週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の第4位、そして「このミステリーがすごい!2018年版【国内編】」の第6位に選ばれている。
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人気ホラー作家・白布施正都(しらふせ まさと)に誘われ、ミステリー作家の有栖川有栖は、京都・亀岡に在る彼の家「夢守荘」を訪問する事になる。其処には、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」が在ると言う。然し、“アリス”が其の部屋に泊まった翌日、白布施のアシスタント・渡瀬信也(わたせ しんや)が嘗て住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、右手首の無い女性の死体が発見される。
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夢遊病の人物や手首が切り落とされた死体が登場する等、横溝正史氏の作品を思わせる設定だが、火村及びアリスが口にしているのが関西弁で、尚且つ漫才の様な掛け合いが多かったりする物だから、重苦しい感じは無い。
バラバラに存在していると思われた幾つもの謎が、最後になって全て関係している事が明らかになる。一番の謎だった「何故、犯人は片手だけを切り落としたのか?」というのも、「成る程。」と見事に腑に落ちたし、犯行動機も含め、“ストーリーの収束のさせ方”は「御見事!」の一言。年間ミステリー・ランキングの常連というのも納得出来る。
切ない展開が続いていただけに、最後の最後に待ち受けていたハッピーな事実には、ホッとさせられる物が在った。
総合評価は、星4つとする。