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「御相撲さん満載 搭乗に『待った!!』 ~鹿児島国体 航空便分散の珍事~」(10月18日付け東京新聞[朝刊])
鹿児島・奄美大島で13~15日に開かれた国体の相撲競技を巡り、旅客機の重量規定に反する恐れが在るとして、日本航空(JAL)が急遽臨時便を運航し、選手を分散して運ぶ珍事が在った。単に重過ぎて飛べないというだけの話でも無さそうだが、一体何が在ったのか。
「吃驚した。『体重制限で乗れない。』と連絡が来たから。」。
奄美市教委国体推進室長の岩切貴人さん(49歳)は、こう振り返る。奄美大島で初めての国体が始まる前日の12日朝、大阪国際空港(伊丹空港)から現地入りする予定の選手団に電話で知らされたと言う。
選手と監督は定期便で羽田空港に移動し、其処から臨時便で奄美入り。岩切さんは、「夕方の審判・監督会議が心配だったが、何とか間に合い、スケジュールへの影響は無かった。寧ろ、好角家への奄美のアピールになったかも知れない。」とほっとした様子だ。
奄美大島は「土俵の数が日本一の島」とされ、130超の土俵が島内の集落毎に設けられている。地域の豊年祭では、子供から大人迄が奉納相撲を行う。現在、大相撲には12人の力士が所属しており、明生、大奄美の2人の関取が活躍している。
相撲所・奄美に、突如降り掛かった珍事。JAL広報部によると、11日深夜に運航計画を作成した際、伊丹、羽田両空港発の便に国体の相撲関係者の予約が多い事が判明した。「全員が其の儘搭乗した場合、必要な燃料を搭載出来ない恐れが生じた。」と言う。機体は共に、小型機のボーイング737(165人乗り)だった。
奄美空港の滑走路は2,000m程で、大型機の離着陸が難しく、機体変更では対応出来なかった。伊丹から乗る予定だった14人は羽田に移動し、羽田から乗る予定だった一部の選手も含め、計27人が奄美行きの臨時便に搭乗した。担当者は、「非常に珍しい事態。」と説明する。
今回のケースに付いて、アマチュア相撲を統括する日本相撲連盟も「此れ迄に聞いた事が無い。」と回答した。其れでは、国内外を巡業する大相撲の力士はどうか。日本相撲協会広報部は「移動に使うのは、主に観光バス。飛行機や新幹線で移動する事も在るが、臨時便が出た前例は無い。」と説明し、「基本的には巡業に参加する力士や親方、行司等が纏まって移動するが、人数によっては班毎に分かれる。全員が同じ列車や飛行機に乗る訳では無く、同じ空間に一般客が居る事も在る。」と付け加えた。
JALによると、機体に搭載する燃料は飛行距離だけでは無く、天候によっても変わると言う。悪天候で在れば、上空待機の必要性が増す為だ。通常、搭乗時の旅客の体重は測定しておらず、一般客なら1人当たり約70kg、スポーツ選手なら約120kgと試算している。更に、プロ・スポーツの場合、ウェブサイトや選手名鑑に載っている体重を参考にするケースも在ると言う。
航空評論家の杉江弘氏は、「此の方法しか無かったとはいえ、運航当日では無く、数日前に対応出来た事案だとも思える。準備不足と言えるかも知れない。」と前置きし、こう話した。
「総重量がオーヴァーしていれば、奄美空港の様な短い滑走路での安全な着陸は困難だ。一般論として、離陸時の滑走距離等に影響するし、離陸直前に後方の乗客が前方に移ったりすれば、異常発生の危険性も在る。臨時便の運航は、安全を重視した決定だ。」。
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「搭乗する前日に『体重制限で乗れません。』という連絡が来た。」というのは、余りにも御粗末な事では在るけれども、事情を知ると「仕方無かったんだろうな。」という気もする。
興味深いのは「搭乗時の旅客の体重を、一般客なら1人当たり約70kg、スポーツ選手なら約120kgと試算している。」という点。例えば日本のエレヴェーターの場合、社団法人日本エレベーター協会は「1人当たりの体重を65kgと設定している。」ので、一般人レヴェルに関しては「其れよりも5kg/人重く試算している。」訳だ。