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経営していた会社も家族も失い、川辺の空き地に住み着いた家具職人・東口太一(ひがしぐち たいち)。ホームレスの仲間達と肩を寄せ合い、日銭を嫁ぐ生活を送っていた。
其処へ或る日、謎の女・奈々恵(ななえ)が転がり込んで来る。川底の哀しい人影。そして、奇妙な修理依頼と、迫り来る危険。
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道尾秀介氏の小説「笑うハーレキン」を読了。恥ずかしい話だが、此のタイトルを最初に目にした時、「バイクに関連する話かな?」と思った。「ハーレキン」という言葉の響きが、「ハーレーダヴィッドソン」を思い起こさせたから。「ハーレキン(harlequin)」は「道化師」を意味するというのを、此の小説で初めて知った。諸説在るのだろうが、「道化師」と「ピエロ」の違いは、「目の下に涙が描かれているか否か。」とか。ピエロは目の下に涙が描かれており、同じ人を笑わせる存在で在っても、ピエロの方が道化師よりも哀愁を背負っているとも言える訳だ。
人は誰しも、何等かの“仮面”を被って生きている。他者から触れられたくない部分を隠す為、其れ其れが異なった仮面を被り、違う自分を演じている面“も”在ったりする。道化師も顔にメークをする事で、普段の自分とは異なる人間を演じており、「笑うハーレキン」に登場する人々も又、普段の自分とは異なる人間を演じるべく、顔にメークを施した道化師なのだ。
非現実的なシチュエーションも幾つか見受けられるが、先が気になって、ついつい頁を捲ってしまう内容。「思い込み」を逆手に取り、読者をミスリードさせる絶妙な記述が2ヶ所在り、自分はまんまと騙されてしまった。又、或る人物の意外な正体が最後の最後に明らかになるのだけれど、此れも驚きで、尚且つ「張られていた伏線の数々」には、「上手いなあ。」と唸るのみ。
ネット上の評価はそんなに高く無い様だが、個人的には近年の道尾作品の中では「良い出来の部類」だと思う。総合評価は、星3.5個。