ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ネットビジネスの終わり」

2010年03月22日 | 書籍関連
一般的に「XXが流行っている。」と言われ出した時点で、その流行はピークを過ぎている。」と言われる。「XXが流行っているみたいだから、自分もそれに乗っかって儲けよう。」と自分を含めたの人は考えてしまい勝ちだけれど、ピークを過ぎている状態で多くの人が乗っかったら、儲かる可能性は先ず無い。流行を最初に作った人間がしこたま儲け、それと全く同じ形で追随した人間は大コケするというのは、世の習いと言って良い。

とは言え、所謂ネットビジネス」に関しては今が盛りだけれど、「“それなりの工夫をすれば”、今後も結構な確率で成功する。」様なイメージを持っていた。商才の無い自分だから実際に手を出そうとは思わないけれど、同じ様なイメージを漠然とでも持っている人は少なくないのではないだろうか。だからこそ、書店で「ネットビジネスの終わり」という本を目にした時は、非常に意外な感じがした。

この本を著したのは、ネット上で「切込隊長」なるハンドルネーム著述活動されている山本一郎氏。不勉強彼の事は存じ上げなかったのだが、インターネットの世界に精通している人物として、知る人ぞ知る存在の様だ。

「ネットビジネスの終わり」は大別すると、「携帯電話業界」、「マスメディア」、そして「アニメ&ゲーム業界」という3つの業界に付いて触れている。それぞれの業界に関する知識が乏しい自分なんぞは勉強させられる内容ばかりだったが、中でも「積極的に人材育成&海外への売り込みを図る事で、将来的には我が国の新たな基幹産業に成り得るのではないか。」という思いの在ったアニメが、実は「将来に於いても、実利を生み出すのは非常に難しい。」という事実には最も驚かされた。

その詳細に関しては実際にこの本を読んで確認して貰えればと思うが、読んでいて印象に残った記述を幾つか取り上げてみたいと思う。

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【マスメディア】

・ 読者が求める専門性のある高度な情報(医療やビジネス、政治、国際情勢など)は、必ずしも地回りをして取材を進めている新聞記者が持ち合わせているとは限らない。逆に、読者の求める専門性の要らないカジュアルな情報(芸能やスポーツ、エッセイなど)は、ネットで無料で出回っているため、新聞記者を雇える価格では読者が買ってくれない。新聞業界のジレンマは、新聞を発行し維持するための費用を捻出するだけのコストをどう読者に負担してもらうかを考えた場合に、通常のリストラや経営努力の延長線上では均衡する点が見当たらないことにある。

・ 新聞社にできることは、ウェブに進出したり、若者に迎合するフリーペーパーなどの新媒体を作り出したりすることではなく、純粋に既存の購買読者に新聞を読むのをやめるきっかけや口実を与えないことなのだ。

・ かなりの割合の国民が新聞記事の内容を信頼しているのに、肝心の新聞を購読しなくなった理由は、ネットで新聞記事を読めるようになったからだけではなく、新聞紙に掲載される情報のうち、読者が読みたいと思う記事が全体に比べてわずかだからである。新聞を購読している読者は、各年代を通じて1日に新聞を読む時間がだいたい15分から30分程度であると回答している。その程度の時間を新聞読みに割いたところで、配達された新聞を読み切れるはずがない。


【アニメ】

・ 03年6月、経済産業省の発表した「アニメーション産業の現状と課題」という報告書によると、番組スポンサーから広告代理店にアニメ番組のスポンサー料として5,000万円が支払われた番組に対して、放送局(キー局)はアニメ制作会社に制作費として800万円を支払っているが、その制作会社はさらに下請けをしている作画プロダクション、音声制作会社などに1,000万円から1,200万円を支払ってアニメを制作しているという、ちょっとショッキングなモデル・ケースを紹介している。

・ アニメ制作会社が苦しい理由は、非常に単純な二つの理由に集約される。まず第一に、アニメを好きな層は基本的に貧乏であること。アニメが好きでそのアニメを見てスポンサー企業やその商品に好感を抱き、買ってくれる割合が非常に少ない。スポンサードの効果が限定的であることが知れているため、視聴者の特性相俟ってスポンサーとして名乗りを挙げる企業は驚くほど少ない。(中略)第二に、まともにアニメを制作しようとすると、他の番組制作の制作単価に比べて倍以上のコストがかかる。
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読んでいて「成る程、ネットビジネスは終わりなのかも。」と感じるものの、アニメ業界もそうだけれど、「着眼点を変えれば、収益性の改善を図れる道が見付かるのではないか?」という気も、素人の立場からすると湧くのだが・・・。

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