最近、石田衣良氏の作品にはまっている。石田氏の作品と言えば、デビュー作であり第36回オール讀物推理小説新人賞を受賞した「池袋ウエストゲートパーク」(通称、IWGP。)が有名だが、自分の場合も最初に読んだ彼の作品はこのシリーズだった。
今から5年前にドラマ化された「池袋ウエストゲートパーク」。自分は全く見ていなかった。その後、じわじわと人気が高まり、深夜枠で何度も再放送されていたのは知っていたが、見ようという気は起こらなかった。「池袋を根城にしたストリートギャングの抗争を描いている。」とか、「かなりグロい描写が出て来る。」といった余り不得手ではない題材を扱っている事が大きかった。そして、”ジャニタレ”のワンパターンな学芸会的芝居を見たくないという思いも在った。
しかし、ドラマには一家言を持っているシビアな知り合いからも、「あの作品は面白い。」という話を聞かされるに到っては、流石に無視し続ける事も出来ず、初めてこの番組を見たのは今年の深夜に再放送された(一体何度目の再放送なのだろうか?)際の事だった。クドカンの脚本の冴えも在ろうが、登場人物一人一人の個性が魅力的に描かれていて、作品に惹き込まれてしまった。
「これは、是非とも原作を読まねば。」と思い、石田氏の作品を手にした訳だが、最初に読んだのはIWGPシリーズの最新作「池袋ウエストゲートパークⅤ 反自殺クラブ」。ドラマも良かったが、原作はそれ以上に良かった。確かにグロい描写は目立つものの、表現力の豊富さと生き生きとした文体が実に心地良く、既存の作家にはない感性が感じられた。特に機関銃の如く多用される比喩表現は秀逸。普通、これ程迄に比喩を多用されると、非常に嫌味だし鼻につくものなのだが、彼の場合はスッと心に染み渡る様な自然さすら感じてしまうのだ。石原慎太郎氏が「太陽の季節」で作家デビューした際、閉塞感漂う文壇に新風を吹き込んだと言われたそうだが、石田氏の場合もそれに近いものが在るのではないだろうか。
IWGPシリーズを逆方向に(新作から旧作に向かって)読破して行ったのだが、表現力の豊富さやプロットの巧みさには舌を鳴らされるばかりだった。
そして、先日読み終えたのが、IWGPシリーズ以外の石田氏の作品であり、第129回の直木賞を受賞した「4TEEN(フォーティーン)」だった。
月島に住み、各自異なった個性と悩みを抱える14歳の中学生4人組。子供というには大人過ぎ、大人というには子供過ぎる、微妙な年頃の彼等の廻りで起こった”事件”を描いた作品。誰しもが通り過ぎたであろう甘く、切なく、そしてほろ苦くもある大人への道を、今正に踏み出して行った彼等の姿は、名作「スタンド・バイ・ミー」の世界がオーバーラップし、心に迫る。
本音を言えば、比喩の巧みさ等幾つかの点で、IWGPシリーズの方に軍配を上げたくなる内容だったが、”石田ワールド”は健在で及第点を充分与えられる作品だった。
氏の未読作品を読み漁るのが楽しみだ。
今から5年前にドラマ化された「池袋ウエストゲートパーク」。自分は全く見ていなかった。その後、じわじわと人気が高まり、深夜枠で何度も再放送されていたのは知っていたが、見ようという気は起こらなかった。「池袋を根城にしたストリートギャングの抗争を描いている。」とか、「かなりグロい描写が出て来る。」といった余り不得手ではない題材を扱っている事が大きかった。そして、”ジャニタレ”のワンパターンな学芸会的芝居を見たくないという思いも在った。
しかし、ドラマには一家言を持っているシビアな知り合いからも、「あの作品は面白い。」という話を聞かされるに到っては、流石に無視し続ける事も出来ず、初めてこの番組を見たのは今年の深夜に再放送された(一体何度目の再放送なのだろうか?)際の事だった。クドカンの脚本の冴えも在ろうが、登場人物一人一人の個性が魅力的に描かれていて、作品に惹き込まれてしまった。
「これは、是非とも原作を読まねば。」と思い、石田氏の作品を手にした訳だが、最初に読んだのはIWGPシリーズの最新作「池袋ウエストゲートパークⅤ 反自殺クラブ」。ドラマも良かったが、原作はそれ以上に良かった。確かにグロい描写は目立つものの、表現力の豊富さと生き生きとした文体が実に心地良く、既存の作家にはない感性が感じられた。特に機関銃の如く多用される比喩表現は秀逸。普通、これ程迄に比喩を多用されると、非常に嫌味だし鼻につくものなのだが、彼の場合はスッと心に染み渡る様な自然さすら感じてしまうのだ。石原慎太郎氏が「太陽の季節」で作家デビューした際、閉塞感漂う文壇に新風を吹き込んだと言われたそうだが、石田氏の場合もそれに近いものが在るのではないだろうか。
IWGPシリーズを逆方向に(新作から旧作に向かって)読破して行ったのだが、表現力の豊富さやプロットの巧みさには舌を鳴らされるばかりだった。
そして、先日読み終えたのが、IWGPシリーズ以外の石田氏の作品であり、第129回の直木賞を受賞した「4TEEN(フォーティーン)」だった。
月島に住み、各自異なった個性と悩みを抱える14歳の中学生4人組。子供というには大人過ぎ、大人というには子供過ぎる、微妙な年頃の彼等の廻りで起こった”事件”を描いた作品。誰しもが通り過ぎたであろう甘く、切なく、そしてほろ苦くもある大人への道を、今正に踏み出して行った彼等の姿は、名作「スタンド・バイ・ミー」の世界がオーバーラップし、心に迫る。
本音を言えば、比喩の巧みさ等幾つかの点で、IWGPシリーズの方に軍配を上げたくなる内容だったが、”石田ワールド”は健在で及第点を充分与えられる作品だった。
氏の未読作品を読み漁るのが楽しみだ。
TBさせていただきました。
石田衣良はいいですね。でも女性にもてすぎるのは欠点かな(笑)なんて男性のひがみです。
彼のよさの一つは、少年の感性をみずみずしく描き出せるところなんだろうな、とこの本を読んで思いました。