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優しい夫・神村洋祐(かみむら ようすけ)と可愛い小学生の息子・智(さとし)。幸せな生活を送る妻・奈々(なな)の本当の顔は、対象人物の「処理」を専門とする工作員。彼女にとって、家庭とは偽りだった。夫が謎の死を遂げる迄は・・・。
感情を持たないが故に無敵だった彼女が、愛を知る為の戦いの幕を開ける。壮絶な騙し合いと殺し合い。其の果てに待つ真実とは?
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大沢在昌氏の小説「ライアー」。ライアーは英語で「liar」と記し、「嘘吐き」を意味する。其のタイトル通り、此の作品に登場する人物達の多くは、嘘で固められた“姿”で生活している。
病気や事故を装って、工作員を“排除”する政府の機関。公には認められていないとしても、海外にはそういった物が存在しているのは確かだろう。公の組織では在るけれど、我が国の“公安警察”も、そんな役割を担っている筈だ。しかし、一般人で在る我々には、そういった存在のイメージが、今一つ希薄なのも事実で、「ライアー」に登場する工作員達の“活動”も、現実感が薄かったりする。
上記した様に、嘘で固められた姿で生活する人物達が余りに多い為、「実像」と「虚像」がゴチャゴチャになってしまい、ストーリー的に判り難い部分が在る。
終わり方もスッキリしないし、「結局、“神村奈々”という女性の“実像”は何なの?」という思いしか残らない。消化不良と言うよりも、「何だか良く判らない。」という感じの作品。
総合評価は、星2つとする。
ネット上で読書傾向の似た方のレヴューを参考にする事が多く、其れで「面白そう。」と思った作品には、概して外れが少ないです。唯、読書傾向が似ていても、細かい部分では「どうかなあ。」と思う事も在るし、逆に普段は読書傾向が似ていない方の激賞作品を読んで、「此れは面白い!」と思う事も。
でも、一番嬉しいのは、余り注目度が高くない作品を自身で“掘り当て”、「面白いなあ。」と感じた瞬間。他の人にも教えて上げたくなるし、読書好きとしては至福状態とも言えます。
大御所の作品にも、信じられない様な外れが在ったりしますね。当ブログでも何度か指摘しているのですが、好きな作家の1人で在る西村京太郎氏も、随分前より「行数稼ぎとしか思えない、余りにも多い読点使い。」や「似た作風が続く。」等、初期の頃の琴線に触れる作品を知っているだけに、幻滅する事も少なく無いです。