ネット上で「話題の低視聴率ドラマが、中年サラリーマンから支持」というニュース・タイトルを目にした時、「“彼のドラマの事じゃないかな?」と思って記事を読んだら、矢張りそうだった。
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「話題の低視聴率ドラマが、中年サラリーマンから支持」(8月6日、dwango.jp news)
柳葉敏郎(53歳)が主演するフジテレビ系連続ドラマ「あすなろ三三七拍子」【動画】(火曜、午後9時)。視聴率が低いとニュースになっている反面、内容が面白いと支持する声も多いという此のドラマ。抑、「大学の応援団」という現代に於て余り馴染みの無いテーマを取り上げた此の作品の意図は、何処に在るのだろうか?御覧になった事の無い方も多いと思われるので、簡単に内容を説明すると、作家・重松清の「あすなろ三三七拍子」が原作で、存続の危機に在る翌檜大学応援団を立て直す為、50歳の中年男が団長に就任し、若者達と世代を超えて苦難に立ち向かう、というストーリーで在る。
一見すると、熱い男の友情や、根性や団結力の大切さ等を伝え様としているのかと、時代遅れ感が否めない。が、実はそんな単純な事で無かったりするのが、此のドラマで在る。扱きだ、根性だと昔の常識を押し付けるOB応援団部員(会社員でも在る)に、パワハラだ、御時世だと、今の時代では通用しない事を突き付ける現役部員。会社でも自分達の青春だった応援団でも、時代は変わっているという事を痛感する。
「此れじゃあ、会社と変わらん。若いもん誘っても、まぁ飲みに行かん。偶に行った思うたら、人の話聞かんと、ずっと携帯弄っとる。」。そんな台詞は、現実世界の中年サラリーマンも、妙に共感するのではないか。応援団の精神でも在る「兎に角、只管」、文句を言う前に先ずは遣ってみる、で育った中年サラリーマン世代。遣る事の意味や理由を、先ずは教えて欲しくて、理不尽な事を極端に嫌う若い世代。
此のドラマで描いているのは、正に現代の会社組織の縮図で在る。そんな応援団のポリシーとして、3話(7月29日放送)で、こんな台詞が在る。「応援というのは抑、傲慢な事なんです。頑張っている相手に、頑張れと言う訳ですから。 だから我々は、応援される相手より沢山汗を掻くんです。人に頑張れと言うからには、自分達が誰よりも頑張らばければ、応援する資格を持てないんです。」。思う様に動いてくれない若い部下を御持ちの中年サラリーマンの皆さん、何かヒントになる物は在っただろうか?自分が何より動いて、頑張っている姿を背中で見せる。そんな姿に、若い部下は付いて来るのかもしれない。
会社組織で生きるヒントが欲しい方は、是非「あすなろ三三七拍子」を御覧になってみては如何だろうか。
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「エール物産」に勤務する中年サラリーマンの藤巻大介(柳葉敏郎氏)が翌檜大学応援団の第58代団長として“出向”する事になったのは、同大学の前身「世田谷商科大学」の第15代団長で在り、エール物産の現社長でも在る荒川剛(西田敏行氏)が原因。愛する応援団が存続の危機に在る事を知った荒川が、リストラ候補の藤巻に「応援団を再建せよ。再建出来たら、再びエール物産に戻す。出来なかったら、首だ。」と、社長命令を出したのだ。
全く期待しないで見始めたのだが、ストーリーの面白さに引き込まれ、以降は8月5日に放送された第4話迄、全て見続けている。視聴率が低いという話(関東地区で、4.1%~7.7%)は知っていて、「こんなに面白いドラマが、何故低視聴率なのだろう?」と不思議に思っていた。
此のドラマが魅力的な理由は幾つか在るが、先ずは「作品のオリジナリティーの高さ」というのが挙げられるだろう。「50歳の中年サラリーマンが或る日突然、大学の応援団団長として出向させられる。」なんて設定は良い意味で突拍子が無く、そんなおっさんの学ラン姿というのも、映像としてインパクトが在る。
配役も良い。昔の常識を金科玉条としている応援団OBの西田氏や反町隆史氏、ほんこん氏も嵌まっているが、「大介から(大介の)娘と付き合う許可を得たいが為だけに、応援団の部員となった、金髪でちゃらい保阪 翔。」の役を演じている風間俊介氏が最高。彼を初めて知ったのはドラマ「3年B組金八先生 第5シリーズ」でだったが、当時から「演技の上手い子だなあ。」と感じていた。以降、彼が出演するドラマは幾つか見て来たが、癖の在る役は本当に上手い。
所謂“体育会系の雰囲気”が嫌いな自分。そういう意味では、昔の常識を押し付けて来る応援団OBに対し、反発する若い連中の気持ちは理解出来る。でも、「嗚呼!!花の応援団」【動画】を見て育って来た世代でも在る自分には、合理性を過度に主張し、無機的過ぎる面を見せたりもする若い世代に対し、眉を顰める(自分よりも)上の世代の気持ちも理解出来たりするのだ。そんな世代だからこそ、「昔の常識」と「今の常識」とのぶつかり合いをコミカルに描いた此のドラマに、魅了されるのかもしれない。(「コミカルに描いた」というのが重要なポイントで、だからこそ“不変の真理”がよりグッと来る。)
より多くの人に見て貰いたい、御薦めのドラマで在る。