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「離脱51.9%で勝利・・・英国民投票、開票終了」(6月24日、読売新聞)
英BBC放送によると、英国の欧州連合(EU)残留か離脱かを問う国民投票の開票作業が終了した。
離脱支持が1,741万742票で得票率51.9%、残留支持が1,614万1,241票で得票率48.1%だった。
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「色々言われていたけれど、蓋を開けてみれば残留支持派が、僅差で勝利するだろうな。」と予想していただけに、「離脱支持派が、約127万票の差を付けて勝利した。」という結果は驚きだった。
今回の結果を予想外とする人は少なく無かった様で、昨日は世界中の市場が大混乱した。又、残留支持を訴えていたイギリスのデーヴィッド・キャメロン首相は今回の結果を受けて、辞意を表明。イギリスはEU離脱に向け、今後2年間を目途にEU全加盟国と交渉を続けて行く事になるが、イギリスのみならず世界中に、大きな混乱を齎して行くのは不可避だろう。
「イギリス人は抑、誇り高き国民。」で在る。“大英帝国時代の栄華”を忘れられず、「他者が自分達に従うのは当然の事で、自分達が他者に従うなんて絶対に嫌。」という意識が強い様に感じられる。「イギリスは世界一で在るべき。2番じゃ駄目!」という事だ。大英帝国への憧憬が強い人程、「EUに加盟している事で、『ああだこうだ。』と指示されるのは受け容れ難い。」と感じ、独立支持へと向かわせたのではないろうか。
そして、独立支持派を増やした一番の要因は、「EUに加盟した事で、移民や難民を大量に受け容れざるを得なくなり、其の結果として我々は彼等に職を奪われた。憎むべき彼等を追い出す為には、EUを離脱するしか無い。」という思考の高まりだろう。「移民や難民を追い出せば、我々は職を得られる。自分達のしたい事をすれば、イギリスは再び世界一になれる。」という“夢”を持っているに違い無い。
EU離脱により、イギリスに薔薇色の未来が訪れるのだろうか?昨年、イギリスの国家統計局が発表した数字によると、「イギリスの輸入元としてEUが占める割合は54%、逆に輸出先としてEUが占める割合は47%。」との事。イギリスが単一市場としてのEUを離脱すれば、(47%も占める)対EU輸出で関税等のコストが増大。イギリスにヨーロッパ拠点を置く世界の企業は多いが、「コストを下げられる。」というメリットを失う事で、他国に移転する企業は続出するだろう。
又、世界の金融センターとしての“シティー”の威信は下がり、スコットランドではイギリスからの独立という動きが再燃。残留支持派と独立支持派との関係悪化は進み、イギリスが大分裂する可能性も零では無い。「薔薇色の未来を思い描いていたら、悲惨な未来が待っていた。」という事にならなければ良いが・・・。
「独立支持派の勝利を期待して、スコットランドに入っていた。」と思われるドナルド・トランプ氏は今回の結果を受け、「グレートな事だと思う。ファンタスティックな事だと思う。」とコメント。更に「人々は、“自分の国”を取り戻したいのだ。独立が欲しいのだ。」とも。「アメリカは、世界一でなければならない。アメリカを害する移民や難民を排除すべき。」とするトランプ氏としては、今回の結果を大統領選挙に利用したい訳だ。
ドイツやフランス、イタリア、スペイン等、他のEU加盟国の中にも、EUからの離脱派が少なく無い現実が在る。誰しも「自らの利益が他者に回されるのは嫌。」という思いが在るのは理解出来るけれど、何でも彼んでも作り上げた“仮想敵”の所為にして、「其れ等を排除しさえすれば、自国には薔薇色の未来が待っている。」とするのは如何な物だろうか?
加えて、“過去の栄華”に縋り、「何が何でも自国が、世界一にならなければ駄目!」という思考の広がりも気になる。「自分の国を取り戻す!」というのには、そういった諸々の思考が強く反映されている気も。「自分達さえ良ければ、他者はどうでも良い。」という思考は、我が国でも広がっている様に感じる事も多い。
(ソ連時代からの)ロシアや中国、韓国等、「自分達さえ良ければ良い。世界一になれるのなら、どんな事をしても許される。」という思考が、昔から見られた国は在る。そういう思考を卑しみ、持たない様に身を律して来たのが、我が国の良い所だったし、そういう日本を自分は誇りに思って来たのに・・・。
「自分の国を取り戻す!」という思考が“行き過ぎてしまう”と、其の先に待っているのは不毛な諍いしか無い事を、過去の歴史から学ばなければいけないと思う。