小説「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」(著者:三上延氏)を読了。此の文庫本、書店の売れ筋コーナーに山積みされているのは何度も目にしていたが、読む気にはなれなかった。発行元がサブカルチャー系の出版社「アスキー・メディアワークス」で在り、著者の著作リストを見ると所謂“ライトノベル”がズラリと並んでいる。「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」の表紙イラストもライトノベル感たっぷりで、「此れは、ティーンエージャーを対象にした作品なんだろうな。後に残る物も無さそうな感じだし、読む価値は無いだろう。」と考えていたから。
先週末、足を運んだ図書館の棚に「ビブリア古書堂の事件手帖2 ~栞子さんと謎めく日常~」が置かれており、他に面白そうな小説が見当たらなかった事から、時間潰しといった感じで借りて読む事にした。「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」の第1弾は読まずに、第2弾を読んだ事になる。
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鎌倉の片隅にひっそりと佇む「ビブリア古書堂」。其の美しい女店主・篠川栞子(しのかわ・しおりこ)が帰って来た。だが、入院以前とは勝手が違う様。店内で古書と悪戦苦闘する無骨な青年・五浦大輔(ごうら・だいすけ)の存在に、戸惑いつつも、密かに目を細めるのだった。
変わらない事も1つ在る。其れは、持ち主の秘密を抱えて持ち込まれる本。丸で吸い寄せられるかの様に舞い込んで来る古書には、人の秘密、そして想いが籠もっている。大輔と共に栞子は、其れを或る時は鋭く、或る時は優しく紐解いて行き・・・。
「読む価値の無いライトノベル作品」という偏見を持っていた自分が如何に愚かだったかを、第1話「アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』(ハヤカワNV文庫)」を読み終えた時点で痛感させられた。
スタンリー・キューブリック監督の映画「時計じかけのオレンジ」は見た事が在るけれど、原作は読んだ事が無かった。だから「原作も映画と同様に、モヤモヤとした思いが残る結末。」と思い込んでいたのだが、原作、其れも(イギリスでの)初版は違う結末だった。アメリカで此の小説が刊行された際、「“オリジナル”のハッピーエンドとも受け取れる結末」を「余計な付け足し」と捉えたのか、最終章が削除されてしまったのだとか。映画はアメリカ版を元にして作られた事も在り、「時計じかけのオレンジ」といえば、彼のモヤモヤ感の残る結末をイメージする人が多くなった訳だ。
事程左様に、此の作品は「著者の映画や書籍に対する熱い思い」に溢れている。司馬遼太郎氏に関する逸話の数々なんぞは、「そうだったんだ。」と驚かされる事許りだったし。
青空百景様が紹介して下さった元書店員の作家・大崎梢さん。彼女の作品に自分が嵌まったのは、本に対する愛情が強く感じられた事も大きい。「ビブリア古書堂の事件手帖シリーズ」も似たテースト。
「第1弾『ビブリア古書堂の事件手帖 ~栞子さんと奇妙な客人たち~』が、今年(第9回)の『本屋大賞』で第8位に選ばれていた。」事を、読了後に知った。同賞に「文庫書き下ろし作品」、そして「ライトノベル系作品」がノミネートされるのは、何方も初の事とか。「『初』と成り得てしまう程、面白い作品だった。」という事だろうし、其れは自分も納得出来る。テレビ・ドラマ化乃至は映画化されるのは、先ず間違い無いだろう。
第1弾、そして先月には第3弾も刊行されているという事なので、両方とも近々読みたいと思っている。総合評価は、星4つ。