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XX市に在る「ナミヤ雑貨店」は、「どんな悩みも解決してくれる雑貨店」として週刊誌に取り上げられた事も在る。「夜、相談事を書いた手紙をシャッターの郵便口から投げ込んでおけば、翌日には店の裏に在る牛乳箱に回答が入っている。」というのだ。
実に不思議な雑貨店だが、其の正体は・・・。
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偶然見付けた洞穴に入り込んだ所、時空を超えて別の世界へと飛ばされてしまった。此の様に、「○○に入り込んだら、時空を超えて別の世界へと飛ばされた。」というスタイルは、SFの世界でしばしば用いられる。
冒頭の梗概は、東野圭吾氏の小説「ナミヤ雑貨店の奇蹟」に付いて。ネタバレになってしまうが、ナミヤ雑貨店の「郵便口」と「牛乳箱」は、「過去」と「未来」を行き来する“タイム・トンネル”の入口(乃至は出口)という設定で、此の設定自体は上記した様に、SFの世界では然して珍しくは無い。
最初は全く関係性が無いと思われた登場人物達だが、ストーリーが進む中で、或る共通点の存在が明らかになって行く。其の明らかになって行くプロセス、そしてタイム・パラドックスを躱すテクニックには、東野圭吾という作家の非凡さを再認識させられた。SFの世界では然して珍しくは無い設定だからこそ、作家の手腕が問われるのだ。
読み終えた瞬間、心が浄化される様な感じがした。東野氏の作品「手紙」の読後感と、何処か似た感じだ。登場人物達の“其の後”を、個人的には知りたくなった。
総合評価は星4つとする。