焼け野原と化した国土を抱え、敗戦を迎えた我が国。その後、勤勉な国民性と朝鮮戦争による特需景気も在って、未曾有の高度経済成長期を迎える事となる。そんな中、1956年に発表された「経済白書」には、その年の流行語にもなった「もはや戦後ではない。」という言葉が載る等、戦後11年を迎えて悲惨な戦争の記憶が消えつつある事を印象付けた。
しかし、それから16年後の1972年にグアム島で横井庄一元陸軍伍長が、そしてその2年後の1974年にフィリピンで小野田寛郎元少尉が発見されると、「未だ戦後は終わっていなかったのだ。」と多くの国民が思わされる事となる。
幼児期に在った自分も、横井氏及び小野田氏の帰国を告げるニュースはハッキリと覚えている。勿論、事の詳細は判らなかったが、「戦争が終わったのに、30年近くも日本に帰れなかったのかあ。何で帰らなかったんだろう?」と感じた。その後、年を経て行くにつれ、「生きて虜囚の辱めを受けず。」といった戦陣訓に代表される日本軍の厳しい軍律や、武士道の気風が色濃く残っていた当時の状況を知るに到って、彼等が異国の地で”闘い”続けていた理由を少しずつ理解していった。
横井氏が帰国時に発した第一声で、この年の流行語にもなった「恥ずかしながら、生きて帰って参りました。」や、発見され帰国を促された小野田氏が、「上官の投降命令無くしては、任務を離れる事は出来ない。」と語ったのも、愚直な迄の生真面目さも在ろうが、日本軍の厳しい軍律による”恐怖支配”が彼等の心に深く刻まれていたのではないかとも思う。*1
そして、戦後60年という節目の年を迎えた今年、フィリピンのミンダナオ島で元日本兵2人が生存しているというニュースが報じられた。一昨日の深夜に第一報を知ったのだが、「又、デマだろう。」と思った。ここ数年、そういった類の話が出ては消えていた事も在るし、何よりも60年という余りにも長過ぎる歳月が、事の信憑性を判断しようという気力を起こさせなかったというのも在る。
しかし、昨日になって以降報じられるニュースでは、どうやらその信憑性はかなりの高さを示している様だ。横井氏や小野田氏の約30年という潜伏期間も想像を絶するものが在ったが、その倍の60年とは・・・。
一人の人間が生まれ、「乳・幼児期→少年期→青年期→壮年期」と長い年月を経て、還暦を迎える迄の気が遠くなる年月。人間にとって、充実すべき時代を、フィリピンの山奥で反政府ゲリラと共に過ごす事で費やさなければならなかったとしたら・・・。余りにも気の毒さを覚える。
ミンダナオ島周辺には、他にも元日本兵が生存しているという話も在る。その数は40人に上るのではないかという話も。
俳人の中村草田男氏の句に「降る雪や明治は遠くなりにけり」というものが在るが、明治どころか昭和という時代も歴史の彼方に追われつつある今。未だ戦後は終わっていなかったと思わされた話である。
日本への帰国を望んでいるとされる元日本兵の方々が無事に帰国され、少しでも幸せな状態で残りの人生を送って欲しいと思う。戦争での代償はとてつもなく大きく、決して埋め合わせが出来るモノではないと思うが、そう願わずには居られない。
*1 横井氏や小野田氏に関連する事柄は、御笑いの世界でもかなり取り上げられていた。小野田氏の帰国を空港で出迎えた母親が、感極まって発した「アンタは偉い!」は小松政夫氏が多用して流行らせたし、横井氏の「恥ずかしながら」というフレーズも誰彼となく御笑いの人間が使っていた様に記憶している。
そう言えば、第一次漫才ブームの際に、B&Bの島田洋七氏が相方の島田洋八氏のアフロヘアをジャングルに見立てて、「横井さーん!」と投降の呼び掛けをするというギャグが在ったなあと遠い目をしてしまう自分(^o^;;;。
しかし、それから16年後の1972年にグアム島で横井庄一元陸軍伍長が、そしてその2年後の1974年にフィリピンで小野田寛郎元少尉が発見されると、「未だ戦後は終わっていなかったのだ。」と多くの国民が思わされる事となる。
幼児期に在った自分も、横井氏及び小野田氏の帰国を告げるニュースはハッキリと覚えている。勿論、事の詳細は判らなかったが、「戦争が終わったのに、30年近くも日本に帰れなかったのかあ。何で帰らなかったんだろう?」と感じた。その後、年を経て行くにつれ、「生きて虜囚の辱めを受けず。」といった戦陣訓に代表される日本軍の厳しい軍律や、武士道の気風が色濃く残っていた当時の状況を知るに到って、彼等が異国の地で”闘い”続けていた理由を少しずつ理解していった。
横井氏が帰国時に発した第一声で、この年の流行語にもなった「恥ずかしながら、生きて帰って参りました。」や、発見され帰国を促された小野田氏が、「上官の投降命令無くしては、任務を離れる事は出来ない。」と語ったのも、愚直な迄の生真面目さも在ろうが、日本軍の厳しい軍律による”恐怖支配”が彼等の心に深く刻まれていたのではないかとも思う。*1
そして、戦後60年という節目の年を迎えた今年、フィリピンのミンダナオ島で元日本兵2人が生存しているというニュースが報じられた。一昨日の深夜に第一報を知ったのだが、「又、デマだろう。」と思った。ここ数年、そういった類の話が出ては消えていた事も在るし、何よりも60年という余りにも長過ぎる歳月が、事の信憑性を判断しようという気力を起こさせなかったというのも在る。
しかし、昨日になって以降報じられるニュースでは、どうやらその信憑性はかなりの高さを示している様だ。横井氏や小野田氏の約30年という潜伏期間も想像を絶するものが在ったが、その倍の60年とは・・・。
一人の人間が生まれ、「乳・幼児期→少年期→青年期→壮年期」と長い年月を経て、還暦を迎える迄の気が遠くなる年月。人間にとって、充実すべき時代を、フィリピンの山奥で反政府ゲリラと共に過ごす事で費やさなければならなかったとしたら・・・。余りにも気の毒さを覚える。
ミンダナオ島周辺には、他にも元日本兵が生存しているという話も在る。その数は40人に上るのではないかという話も。
俳人の中村草田男氏の句に「降る雪や明治は遠くなりにけり」というものが在るが、明治どころか昭和という時代も歴史の彼方に追われつつある今。未だ戦後は終わっていなかったと思わされた話である。
日本への帰国を望んでいるとされる元日本兵の方々が無事に帰国され、少しでも幸せな状態で残りの人生を送って欲しいと思う。戦争での代償はとてつもなく大きく、決して埋め合わせが出来るモノではないと思うが、そう願わずには居られない。
*1 横井氏や小野田氏に関連する事柄は、御笑いの世界でもかなり取り上げられていた。小野田氏の帰国を空港で出迎えた母親が、感極まって発した「アンタは偉い!」は小松政夫氏が多用して流行らせたし、横井氏の「恥ずかしながら」というフレーズも誰彼となく御笑いの人間が使っていた様に記憶している。
そう言えば、第一次漫才ブームの際に、B&Bの島田洋七氏が相方の島田洋八氏のアフロヘアをジャングルに見立てて、「横井さーん!」と投降の呼び掛けをするというギャグが在ったなあと遠い目をしてしまう自分(^o^;;;。
とても興味深い記事で参考になりました。
私はほとんど昭和という時代を知らない世代なので、戦争なんてほんとに「歴史」の一つにしか思えなかったんですよね。
でも実際に戦争を体験した、戦った人たちが今もまだ生きているんだと改めて考えると、何だか身をつまされる思いです。
60年、私どころか、
私の両親ですらもまだその年月を経験していません。
その間に、たくさんの人が生まれ死に、
著しく文化が発展し、人々の思想も変わっていって…。
60年前に、日本に戻れていれば、今頃、
もしかしたら、お孫さんもいたかもしれないのに、
と思うと可哀相という言葉が安っぽく感じるほど、
深い感慨を抱かされます。
60年ってスゴイですよね。きなこ、今までの30年でもいろんな経験をしたし、それによって今のきなこができたのでどれも大切なこと。
9年監禁されていた女の子のニュースを聞いたときも、9年っていろんな経験ができたはずと、すごく重い気持ちになりました。今回もそうです。
でも元日本兵二人は、二人なりの経験をしたのですかね?しているとなんかホッとします。
いづれにしても今後が気になりますね。
小松政夫の「アンタはエライ」ってそっからきていたんですか?さすが、giants-55さん、博識ですね。へへ。
戦後、60年経過して、私も含め、今の世代は戦争は遠い歴史のひとつという感覚がありますが、このような事件があると、戦争はまだまだ続いており、当事者にとって、人生に与える影響の大きさを感じざるを得ません。
多岐にわたる記事でとても参考になりました。
今後のことについてまったくもって同感です。
今の私達にはこの様なニュースで、忘れてはいけない教訓を思い出すいい機会にはなっているようですね。
皮肉なものです。
また来させて頂きます^^
旧日本兵の方々のコメントを聞いてみないことにはなんとも言えませんが、彼らにとっては、今でも戦時中なんですよね。
彼らの会見を聞いたら、おそらくは今の日本人はとても衝撃をうけるはず。
60年前、戦時下の陸軍の方々がタイムスリップしてきたようなものですから。
基本的に、書き込みして下さった方のブログへ、直接レスを付けさせて戴く形を取っているのですが、貴ブログのURLを失念してしまいました為、こちらに書き込む失礼の段を御許し下さい。
60年も異国の地で潜伏していなければならなかったというのは、さぞや辛かった事と思います。横井氏や小野田氏の時も約30年という想像を絶する年月に唖然とさせられましたが、その倍の年月となると・・・。
信憑性を問う声が昨日辺りからチラホラ出て来はしましたが、本当で在れば直ぐにでも帰国させて上げたいし、日本で少しでも幸せな余生を過ごさせて上げたいですね。
あと、巷間言われている様に、反政府ゲリラが潜伏する山中に彼等が居るのであれば、日本のマスメディアも興味本位で潜入する様な事は避けるべきかと。ゲリラ達に捕まって、身代金要求される等という事態になれば、状況はこんがらがるばかりだと思いますので。
これからも宜しく御願い致します。
P.S. 嘗て横井氏や小野田氏が帰国した際、幼心ながらにかなりの衝撃を受けました。あれから30年経った今、元日本兵が帰国されて発せられる言葉の一つ一つを、今の若い子達がどの様に受け止めるか興味在ります。自分自身も、あれから年を加えた分、別の感慨が湧くのかなあと思ったりもしています。
皆さんのコメントを読んでいるうちに
思い至ったことがあります。
記事にしてTBさせて頂きました。
よろしければご一読ください。
私はどんな戦争であったも絶対すべきでないと思います。戦争映画とか人が死ぬ映画とかは涙がでてきてしまって見れません。
なんかまとまってない文章だし、あまり関係のない内容でごめんなさい。でもとても興味深い記事でした。