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「私は誰!?」6月12日の交通事故で、記憶を失った池野千尋(いけの ちひろ)。思い出したのは、「1週間後の19日が、自分の結婚式という事。」だけだ。相手は一体、誰なのか。“自分捜し”を始めた千尋の前に、次々と明かされる予想外の事実。過去のジグソー・パズルは埋められるのか・・・。
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直木賞作家・乃南アサさんの作品「6月19日の花嫁」は、「交通事故で記憶を失った1人の女性が、自ら手掛かりを捜し求め、記憶を取り戻して行く。」というストーリー。上梓されたのが29年前と、非常に古い作品。なので、“今の時代に合わない描写”が在ったりもする。尚、此の作品を原作とした映画「ジューンブライド 6月19日の花嫁」が、1998年に公開されている。
千尋が交通事故に遭う「6月12日」から、物語は始まる。意識を失った彼女が目覚めるのは「6月13日」で、第2章の扱い。「1週間後の19日が、自分の結婚式という事。」しか覚えていない彼女が、「日」を追って“自分”を取り戻して行く姿が、「6月14日」、「6月15日」、「6月16日」、「6月17日」、そして「6月18日」という章で描かれるスタイル。
「御都合主義だなあ。」というのが、全てを通して感じた事。「自分は誰なのか?」を含め、あらゆる記憶を失っている中、「1週間後の19日が、自分の結婚式という事。」“だけ”を覚えているというのもそうだが、「記憶を失っている千尋が、余りにも唐突に記憶を取り戻す。」というのも、「何だかなあ・・・。」という感じ。全く記憶に無い人に会った瞬間、突然に“知り合い”と接する様な言動を見せるというのは、幾ら「瞬間的に記憶を取り戻した。」という設定で在るにせよ、読者に対する説明不足が過ぎる。そういうのが何ヶ所か在り、戸惑ってしまった。
「で、結局はどういう事だったの?」という戸惑いも残った。判った様で、良く判らない終わり方だったので。直木賞作家の作品という事で、大きな期待を持って読み始めたのだが、正直、がっかりする内容だった。
総合評価は、星2.5個とする。