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エリート医師・須賀邦治(すが くにはる)が、鏡に囲まれた部屋で自殺した。其の後、医学部受験を控えた1人の青年・浅川幹夫(あさかわ みきお)が失踪。正義感溢れる 検事・志藤清正(しどう きよまさ)は、現場の状況から他殺の可能性を見破り、独自に捜査を進める。
其の頃、東池袋署の刑事・夏目信人(なつめ のぶひと)は池袋の町を歩き、小さな手掛かりを見詰めていた。二転三転する証言の中で、検事と刑事の推理が交錯する。
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作家・薬丸岳氏の小説「その鏡は嘘をつく」は、「刑事・夏目信人シリーズ」の第2弾に当たる。第1弾の「刑事のまなざし」がそこそこ面白い内容で、第2弾を待ち望んでいたのだが・・・。
エリート医師で、上昇志向の強い須賀邦治が、電車内で痴漢行為を働いたとして逮捕されるも、嫌疑不十分として釈放される。そして1週間後、彼は隠れ家で死んでいるのが発見される。小さなベッドしか置かれていない10畳の部屋とソファーとTVが置かれた6畳の2部屋。ベッドを取り囲む様に幾つもの姿見が置かれ、更に天井にも鏡が張り付けられている10畳部屋で、須賀は鏡に映った自分の姿を見乍ら、首吊り自殺を図ったものと考えられた。
「奇妙な環境下での自殺」が、捜査が進む中で「他殺」と切り替えられて行く。ミステリーとしては“興味が惹かれる設定”の筈なのだが、読み進めるにつれ、冷めて行ってしまった。「登場人物達其れ其れを“突き動かす動機”が、今一つ現実味が無い。」というのが大きく、「幾らトラウマを抱えているとはいえ、“其の立場”で、“其処迄”の事をするかなあ?」という動機も在ったし。まあ、現実社会でも考えられない様な動機で、犯罪を起こしてしまうケースも在るけれど・・・。
厳しいかもしれないが、総合評価は星2.5個とする。
心根に優しさが感じられるキャラクター、其の通りですね。又、才気走るタイプの“名探偵”が少なく無い中、内田康夫氏が作り出した浅見光彦と同じで、何処かおっとりとした感じが在るのも夏目刑事の特徴。
唯、此の作品に関して言えば、彼の存在感が余り示されていなかった様に感じられ、其れが残念でした。