昨秋、「自民党の石破茂幹事長が代表を務める政治団体が、2006年から2011年に掛けて、在日韓国人が代表取締役等に就いている企業3社から、合計75万円の献金を受けていた。」との報道が在った。此の報道を巡ってネット上では「政権交代が確実視される中、自民党の有力政治家で在る石破幹事長を狙い撃ちにした陰謀だ!」という書き込みが、ちらほら見受けられた。
其れ等を見て自分は、もう苦笑するしか無かった。「2011年3月に発覚した前原誠司氏(当時は外相。)の『在日韓国人献金問題』を受け、石破幹事長“自身”が『自分の所は問題無いかどうか調べろ。」という指示を出し、其の結果として自身も外国人から献金を受けていた事実が判明した為、“自ら”がマスメディアに其の事実を公表した。」という事実が在り、陰謀でも何でも無い事が明らかになっていたからだ。
世の中には何でも彼んでも「陰謀論」に結び付けたがる人達が居るが、そういう考え方には全くシンパシーを覚えない。「良く判らないから取り敢えずは、“嫌いな対象”を絡めた陰謀論に結び付けてやれ。」という思いが、其の根底に感じられるから。
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「いま、あなたが手にとってくださったこの本は、かなり変わった本かもしれません。というのも本書は、これまでほとんど語られることのなかった『米国からの圧力』を軸に、日本の戦後史を読み解いたものだからです。こういう視点から書かれた本は、いままでありませんでしたし、おそらくこれからもないでしょう。『米国の意向』について論じることは、日本の言論界ではタブーだからです。」
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1966年に東京大学法学部を中退して外務省に入省し、国際情報局長等等を歴任した孫崎享(まごさき・うける)氏が、「アメリカからの圧力」を軸に、戦後史の裏側を描いた本「戦後史の正体 1945-2012」。
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ここで本書のテーマである「自主」と「対米追随」の問題をもう一度考えてみましょう。私たちは、米国との良好な関係を望みます。当然です。しかし、日本と米国の利害はつねに同じではありません。米国が「日本にしてほしい」と思うことのなかで、日本の国益から見ると好ましくないことがあります。逆に日本の国益から、どうしても実行したいけれど、それが米国の国益にとっては好ましくないと見られることもあります。
「自主」と「対米追随」の差は、①つねに米国との関係を良好にすることをめざすか②少々米国とのあいだに波風を立てても、日本の国益上守るべきものがあるときや、米国の言いなりになると国益上マイナスになるときは、はっきりと主張するかというところにあるのです。
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孫崎氏によると「日本の戦後は常に『アメリカからの圧力』を受け続け、自主派と対米追随派が鬩ぎ合う歴史。」との事。「アメリカにとっては不都合な自主派は失脚して行き、アメリカの意向を受けた対米追随派が力を有して行く。」というのが大きな流れだが、対米追随派で在ってもアメリカから疎まれた瞬間、失脚させられて行くとも。自分がシンパシーを感じ得ない「陰謀論」が軸に在り、「じゃあ何で、そういった“事実”を明らかにした貴方(孫崎氏)は闇に葬られなかったのか?」という意地悪な気持ちも湧くが、取るに足りない“陰謀論本”とは異なり、此の本の場合は具体的な証言や公文書等を逐一挙げた上で論を進めているので、“トンデモ本”という感じはしない。「当時は『何で?』と不思議だったけれど、そういう背景が在るのならば納得出来る。」という事柄が、幾つか紹介されているし。
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米国外交の特徴は、米国が正しいと考えることを相手の国に実施させようとするところにあります。「米国は世界一素晴らしい国だ。だから世界が米国の価値観を受け入れれば、世界も米国のようにすぐれた国になる。」という善意の信念があるからです。
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中国や韓国、北朝鮮等、余りにも身勝手過ぎる国々と比べると、アメリカにはシンパシーを覚えている。しかし、だからと言って「アメリカのする事は全て正しい。」なんて思っていないし、過去の歴史を振り返れば「大国のエゴによって悲惨な目に遭わされて国家や国民」は枚挙に遑が無く、そういった大国の代表とも言えるのが、アメリカなのは確かだろう。そんな思いは以前から在ったけれど、思っていた以上に酷いアメリカのエゴを、此の本からは窺い知る事が出来る。「自国の国益を最優先に考える。」のが外交の本質なのだろうが、書かれている内容の多くが事実“ならば”、度が過ぎている。「『日本とソ連の間に紛争の種を残し、友好関係を作らせない為。』に、アメリカが『北方領土問題』に意図的に関与し、複雑化させて行った。」経緯を“具体的に”記している部分なんぞは、正直驚いてしまった。
「ロシアという“国”(ロシア人という事では無い。)は信用出来ない。」という思いはずっと自分の中に在るけれど、そういう思いを強くさせている1つの要因が「北方領土問題」。此の問題にアメリカが大きく関与していたという“ならば”、アメリカにも不信の思いを向けざるを得ない。
「日本が九分九厘獲得出来たアーザーデガーン油田の開発権を、アメリカの身勝手な横槍によって中国に奪われてしまった。」、「沖縄がずっとアメリカ軍の影響下に在り続ける背景に、昭和天皇の意思が大きく関わっていた。」等々、考えさせられる話が少なく無い。
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「戦争犯罪人の逮捕問題が発生してから、政界、財界などの旧勢力の不安や動揺は極限に達し、とくに閣内にいた東久邇宮首相や近衛大臣などは、あらゆる方面に手をつくして、責任を免れようと焦り、いらだつようになった。」
「最上級の幹部たちが、ひんぱんにマッカーサーのもとを訪れるようになり、みな自分の立場の安全をはかろうとしている。」
「最近の朝日新聞をはじめとする各新聞のこびへつらいぶりは、本当に嘆かわしいことだ。」
「どれも理性を喪失した占領軍に対するこびへつらいであり、口にするのもはばかられるほどだ。」
「幣原新内閣は昭和20年10月9日成立した。その計画は吉田外務大臣が行った。吉田外務大臣は、いちいちマッカーサー総司令部の意向を確かめ、人選を行った。残念なことに、日本の政府はついに傀儡政権となってしまった。」
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上記した様に、此の本は「(アメリカによる)陰謀論」を軸にして書かれている。具体的に証言や公文書を逐一挙げた上で論が進められているけれど、具体的な証言や公文書とは言え、何等かのバイアスが掛かっている可能性は否定出来ない。だから何処迄内容を信じるかは読まれた方々の判断に任せるが、「此の人物は好きだから、不都合な事柄は全て嘘。」といった先入観を排して読むと、歴史の別な一面が垣間見られて面白いと思う。