ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「ヒポクラテスの悔恨」

2021年07月11日 | 書籍関連

**********************************************************
斯界権威浦和医大法医学教室の光崎藤次郎(みつざき とうじろう) 教授がTV番組に出演した。日本司法解剖の問題点を厳しく指摘し、「世の中の問題の9割は、金で解決出来る。」と言い放つ。翌朝、放送局のホームページに「親愛なる光崎教授殿」で始まる奇妙な書き込みが。「此れから1人だけ、誰かを殺す。自然死にしか見えない形で。」という、自然死に見せ掛けた殺人の犯行予告だった。

早速埼玉県警捜査1課古手川和也(こてがわ かずや)刑事と共に、管内異状死体を調べる事になった助教栂野真琴(つがの まこと)は、メスを握る光崎が此れに無い言動を見せた事に驚く。光崎は犯人を知っているのか!?そして、軈て浮かび上がる、哀しき“過ち”とは?
**********************************************************

中山七里氏の小説ヒポクラテスの悔恨」は、“遺体の解剖を通して真実を明らかにして行く法医学ミステリー”で、「『ヒポクラテスの誓い』シリーズ」の第4弾。5つの短編小説から構成されている。因みにヒポクラテスの誓い」とは、「医師倫理任務等に付いての、ギリシア神への宣誓文。」の事だとか。

「『ヒポクラテスの誓い』シリーズ」を読むのは今回の作品が初めてだが、東京医科歯科大学法医学分野の教授・上村公一氏が監修されているという事も在り、解剖によって判明する様々な事柄が詳しく書かれていて、非常に興味深い

先進国では異状死体の司法解剖を数十%から百%近くの割合で行っているのに、日本では5%(平成25年度)にも満たない。予算や司法解剖に従事する人員不足が大きな原因で、異常死体の司法解剖が行われない事で、見過ごされている“犯罪”の可能性は否定出来ない。という“現実”は、現役医師でも在る作家海堂尊氏の作品で知っていた。だからこそ彼は、「死亡時画像診断」で在る「Ai(オートプシー・イメージング)」の重要さを指摘していて、「成る程なあ。」と思ったのだけれど、Aiも完璧では無い様だ。「画像診断の検査数が増大し、診断書に記載されている情報量の多さに主治医が結果を消化し切れていない。」事に加え、画像診断を担当する放射線科医と主治医の連携不足により、Aiによるミスも生じているそうで、要は“扱う人間側の問題”という事。

殺人の犯行予告を行った人物に付いては当てる事が出来たし、謎解きの面でもそんなに難しくは無い。だから、ミステリーという点では物足り無さを覚えるけれど、法医学の蘊蓄に関してはとても面白い

総合評価は、星3つとする。


コメント    この記事についてブログを書く
« 歴代監督の出身地 第2弾[... | トップ | 地球上で最悪の侵略的植物 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。