脚本家の内館牧子さんが週刊朝日に連載しているコラム「暖簾にひじ鉄」に付いては、過去に当ブログで何度か取り上げて来たが、4月7日特大号は「地べたのネックレス」というタイトル。
内館さんは以前、香港の夜店でネックレスを購入した。夜店といっても、地べたに大きな風呂敷の様な布を広げ、其の上に安っぽいアクセサリーを並べている露天商。購入したネックレスはビーズ製で、日本円にして250円~300円程。ハッキリ言って、子供が小遣いで購入出来るレヴェルの物なのだが、白シャツにジーンズを履いた際、とても似合うので、内館さんは気に入っていたそうだ。
然し、昨夏に外出先でネックレスの糸が切れてしまい、ビーズはバラバラと床に散乱。殆ど全てを拾い集め、内館さんは自分で直そうとしたのだが、幾つかのビーズに糸がどうしても通らなかった。其処で、修理屋に出す事に。「脚本家って生活苦しいんだな。こんな物身に付けて。」と思われるのも嫌なので、「香港の夜店で買った物ですが。」と言っておいたそうだ。
で、修理は終わり、ネックレスは戻って来た。綺麗に元の形に戻っていたのだが、驚いたのは請求書に書かれた金額。何と21,600円!糸を通すのに大変だった点も在ろうが、250円~300円程のネックレスの修理代が、そんなにも高額になってしまうという事に、内館さんは納得行かない物が在り、女友達に其の事を話した。
*********************************女友達:「貴方が悪いわよ。見積もり取れば良かったの。」。
内館さん:「見積もり!?地べたのネックレスを糸で繋ぐのに、見積もり取る人居る?」。
女友達:「まあねえ。2万円を超すなんて思わないからねえ。」。
内館さん:「思わないわよッ。」。
女友達:「もう諦めなさい。私だって諦めたんだから。」。
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女友達が「私だって諦めたんだから。」と口にしたのは、彼女も同じ経験をしたから。彼女は以前に通販で、アイヴォリーホワイトのダウン・コートを購入。とは言え、毛皮は当然偽物で、値段は12,000円。とても気に入っていたのだが、白いので汚れが目立つ様になった事から、一冬着た春にクリーニングに出す事に。「此れ、通販の安物で、毛皮も偽物だから、スペシャル洗いで無く、スタンダード洗いにしてね。今年はもう着ないから、時間が掛かっても良いわよ。」と言った上で。
2ヶ月後、ダウン・コートは綺麗に仕上がった。毛皮も本物の様に、柔らかにクリーニングされていた。で、驚かされたのは、請求書に記された「32,000円(消費税別)」という額。余りに高額だったので、彼女は「何でこんなに高いの?」と詰め寄った所、「小さな染みが全体に付いていまして、出来る限り全部消しました。後、毛皮なんですが、偽物だと言われましたが、偽物は下手に洗うと風合いが一変する事が在ります。ですから、時間は掛かりましたが、ベストの方法で致しました。」と言われてしまい、結局、請求通りの金額を支払ったと言う。
内館さんも女友達も、「事前に見積もりを取らなかった事が悪い。」と思う。自分は昔から、事前に必ず見積もりを取る様にしているから。でも、そんな自分でも、トラブルに巻き込まれた事が在る。
もう6年程前の話だが、物凄い強風が吹き荒れた翌朝、家のシャッターのロックがぶっ壊れた。横引きタイプで、2枚で全体を閉めるタイプのシャッター。上下に1ヶ所ずつ、2枚で合計4ヶ所のロックが付いており、其の内の片側上下2ヶ所が強風でぶっ壊れてしまったのだ。何しろ30年以上使っている古いシャッターなので、修理出来るのかどうか不安だったが、ネットで見付けた鍵屋に尋ねると「直せます。」との事。概算見積もりを尋ねると、「出張費等、全て込みで、高くても1万円で済みます。」と。「其の位なら。」と頼む事に。
で、鍵屋のおっさんが自宅に来た。年齢は40代後半といった感じ。当該シャッターを確認し、「此のロックのタイプは、恐らくもう入手出来ない。なので、全く問題無い側のシャッターから、ロックを1ヶ所を取り外し、其れを壊れた側に取り付けます。2枚とも結果的に、ロック出来るの1ヶ所ずつになりますが、其れで良いですか?」と言うので、「其れしか方法が無いのなら、其れで御願いします。」と答えた自分。
修理は10分も掛からなかったと思う。1ヶ所ずつしかロック出来なくなったけれど、まあ其れは仕方無い。問題なのは修理代。修理を終えたおっさんは、平然と「修理代は消費税別で、7万8千円となります。」と言い放ったのだ。「えっ!?『高くても1万円で済む。』って言ったじゃないですか。」と文句を言うも、「修理の形が変わりましたから。」と当たり前の様に言うおっさん。何度か「おかしい。」と言ったが、「決まりですから。」の一言。
確かに“修理の形”は変わったけれど、「2ヶ所取り外し、新しいロックを2ヶ所に取り付ける。」という作業が、「1ヶ所取り外し、もう片方のシャッターから取り外したロックを付け替える。」という作業に変った事が、そんなに大きな変化とは思えない。取り付ける筈だった新しいロック2つが必要無くなり、部品代は全く不要になった。修理時間だって、10分も掛からなかった。其れなのに、「高くても1万円で済みます。」が「7万8千円」にもなるというのは余りな話。
「ぼったくりじゃねえか!」という言葉が喉元迄出掛かったけれど、修理の形が変わったのに、其の時点で修理代の変更の有無を確認しなかったのも事実。そして何よりも、事前に保険会社から「自然災害による被害と判断されますので、修理代は保険が適用されます。」という回答を得ていたので、「仕方無い。」と請求通り払う事になった。
以降、事前の見積もり請求に加え、「少しでも“状況”が変わる度、逐一料金の変化がないかを確認する。」様に。相手を疑い過ぎるのは、決して好ましい事では無いけれど、こういう御時世では自分の身を守る為、用心するに越した事は無いのだ。
支払いに保険が適用されたからよかったもののこれは詐欺ですよね。
人間社会、性善説では生きにくいです。
加入していた保険は柔軟性が在ったから良い物の、普通はこういうケースに対応してくれない事が多いみたいです。
仰る様に、今回のケースは詐欺としか思えない。高齢者を中心に、こういった詐欺で泣き寝入りしている人は少なく無いんでしょうね。全く酷い話です。