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ブラック企業に扱き使われて心身共に衰弱した青山隆(あおやま たかし)は、無意識に線路に飛び込もうした所を、「ヤマモト」と名乗る男に助けられた。小学校時代の同級生を自称する彼に心を開き、何かと助けて貰う隆だが、本物の同級生は海外滞在中という事が判る。
何故、赤の他人を此処迄?気になった隆は、彼の名前で個人情報をネット検索するが、出て来たのは、3年前に激務で自殺した男のニュースだった。
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第21回(2014年)電撃小説大賞のメディアワークス文庫賞を受賞し、「スカッと出来て、最後は泣ける作品。」として60万部以上を売り上げた小説「ちょっと今から仕事やめてくる」(著者:北川恵海さん)。此の5月には、福士蒼汰氏を主役にした映画「ちょっと今から仕事やめてくる」が公開となる。
自殺し様とした所を助けてくれた「ヤマモト」なる男性。彼は小学校時代の同級生と主張するが、隆には全く記憶が無い。社会人として自信喪失していた隆は、ヤマモトと付き合って行く中で、彼の前向きさによって自信を取り戻して行き、仕事も上手く行く様になるのだが、或る“ミス”を切っ掛けに、隆は再び「此の会社で、ずっと働き続けていて良いのだろうか?」と疑問を感じ始める。
会社勤めをした経験が在る人ならば、大なり小なり感じた事が在るだろう違和感が、此の作品から滲み出ている。だからこそ、多くの人が隆に自分を重ね合わせ、感情移入してしまうのだろう。
ヤマモトの正体に付いては、予想が付いた。だから、其の点での驚きは無い。だが、隆の下を去って行ったヤマモトが、2年後に隆と再会する“状況の変化”は驚きが在り、確かにグッと来る物が。
でも、“泣ける”という程の内容では無かった。“御都合主義な設定”という感が否めないので。“心温まる大人の童話”と割り切れば良いのだろうけれど。
総合評価は、星3つとする。