ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「名探偵は嘘をつかない」

2018年06月17日 | 書籍関連

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探偵国家資格となり、警察庁の下部組織「探偵機関」の特務探偵士として、知能犯罪・頭脳犯罪の捜査を担当している世界。知識人人格者名士として尊敬を集める探偵達の中に1人、異質な男がた。阿久津透(あくつ とおる)。探偵機関の生みの親にして、伝説的名探偵・阿久津源太郎(あくつ げんたろう)の息子で、多くの難事件を解決に導いて来た、当代切って論理的知性の持ち主だ。其の性格は、傲岸不遜にして冷酷非情妥協を許さず、徹底的に犯人を追い詰める。其の苛烈さは、事件に関わった人々に無用の軋轢を生み、恨みを買う事も少なく無かった。

 

そんな男に、探偵資格の剝奪さえ検討され兼ねない重大な疑惑が持ち上がった。其れは、彼が証拠を捏造し、自らの犯罪を隠蔽したという物だった。

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「KAPPA-TWO(カッパ・ツー)登龍門」とは、「2002年より開始されたカッパ・ノベルスの新人発掘プロジェクト『KAPPA-ONE(カッパ・ワン)登龍門』を引き継ぎ、プロジェクトの出身者で在る石持浅海東川篤哉両氏を選考委員に迎え、『ジャーロ』誌上で始まった公募企画。」なのだとか。「KAPPA-ONE登龍門」は2007年を最後に発表されなくなったが、昨年から「KAPPA-TWO登龍門」と名称を変えて公募が始まり、そして第1回目の入選作となったのが、今回読了した小説名探偵は嘘をつかない」で在る。

 

著者阿津川辰海氏は1994年生まれで、東京大学在学中に此の作品で昨年、文壇デビューを果たしている。自分が注目している“ミステリー関連の年間ブック・ランキング”は「本格ミステリ・ベスト10」(発行元:原書房)、「週刊文春ミステリーベスト10」(発行元:文藝春秋)、そして「このミステリーがすごい!」(発行元:宝島社)の3つだが、「名探偵は嘘をつかない」は「2018本格ミステリ・ベスト10【国内編】」で3位に選ばれた。

 

「警察庁の下部組織で在る『探偵機関』」、「探偵士」、「転生」、「幽霊」等、非現実的な設定が幾つも盛り込まれている。「幽霊は生きている人間からは見えないが、幽霊は生きている人間に気付かれずに、彼等がする事を見る事が出来る。」というのは、「犯人と思われる人間がした事実を、其の人間に気付かれずに見る事が出来る。」という事だ。探偵役の人間(「生きている人間は、幽霊を見る事が出来ないのでは?」という疑問は、本を読めば解消される。)は、幽霊から見た事実を知らされており、其の事実を元にして謎を解いて行く。

 

漫画DEATH NOTE」では、「名前を書いた人間を死なせる事が出来るという死神のノート『デスノート』。」が登場する。「デスノートに名前を書き込みさえすれば、誰でも死なせる事が出来る。」という事になってしまうと「何でも在り。」になってしまうので、“幾つかのデスノートのルール”が設定されているのだが、今回の作品の「転生」という設定も、幾つかのルールが取り決められており、ストーリーが無駄に広がり過ぎてしまう事を防いでいる。其れは見事では在るけれど、逆に言えば“理屈っぽい設定”にもなってしまっており、そういう点で読むのが面倒臭くなる人も居るだろう。

 

又、上記した様に非現実的な設定が幾つか在り、特に「転生」だ「幽霊」だという設定を嫌うミステリー・ファンも居そう。

 

「『週刊文春ミステリーベスト10』及び『このミステリーがすごい!』が“面白さ”を最優先させているのに対し、『本格ミステリ・ベスト10』は“論理的推理”という物を最優先させている。」様に感じている。だから、「週刊文春ミステリーベスト10」及び「このミステリーがすごい!」の上位に選ばれている作品が「本格ミステリ・ベスト10」に選ばれていなかったり、逆に「本格ミステリ・ベスト10」で上位に選ばれているのに、「週刊文春ミステリーベスト10」及び「このミステリーがすごい!」ではベスト10にも入っていない作品が在ったりするのは、決して珍しく無い。今回の「名探偵は嘘をつかない」も「本格ミステリ・ベスト10」では3位に選ばれているのに、「週刊文春ミステリーベスト10」及び「このミステリーがすごい!」ではベスト10に入っていない。

 

「『本格ミステリ・ベスト10』の上位に選ばれるのは、比較的“理屈っぽい作品”が多い。」という感じが在り、「名探偵は嘘をつかない」はそんな匂いが強い作品。非現実的な設定だけれど、論理的推理は存在する。好き嫌いがはっきり分かれる作風だろう。

 

速読派の自分が、此の本を読むのに結構な時間を要した。内容的に、肌合いが余り合わなかった。という証左だろう。

 

総合評価は星3つ


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