ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「楽園とは探偵の不在なり」

2021年06月17日 | 書籍関連

**********************************************************
2人以上殺した者は、“天使”によって即座地獄堕とされる様になった世界。探偵・青岸焦(あおぎし こがれ)は、「天国が存在するか知りたくないか?」という大富豪・常木王凱(つねき おうがい)に誘われ、常世島を訪れる。其処で彼を待っていたのは、起きるの無い連続殺人事件だった。
**********************************************************

「2020週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の3位「このミステリーがすごい! 2021年版【国内偏】」の6位、そして「2021本格ミステリ・ベスト10【国内偏】」の4位に選ばれた「楽園とは探偵の不在なり」(著者斜線堂有紀さん)は、不可思議な設定の小説

天使、と言っても我々がイメージする様な容姿では無い。「灰色がかった骨ばったは、色の悪い血管が透けており、丸で蝙蝠の翼の様で、其の翼が接続しているのは、手足の異常に長い灰色の身体。細くて人間に近い構造をしており、の物ともの物とも付かない身体には、何故か常にが降りている。そして、其の顔はで削られたかの様な平面になっていて、表情は疎か目鼻口も存在しない。顔の表面は鏡の様に輝いているものの、其処には何も映らず、光すら反射しない。触れれば固く、何を使おうとも傷1つ付かない。」という悪魔を連想させる不気味な天使達が、当たり前の様に飛び回っている世界が舞台。「人を2人以上殺した者は、天使によって即座に地獄に堕とされる。」という現実を目の当たりにした事で、“殺人”という行為に対し、今以上に「犯したら、恐ろしい目に遭う。」とより身を律する者が現れる一方、「殺すのが1人だけなら、地獄には堕とされない。」と安直に1人“だけ”殺害したり、「どうせ地獄に堕とされるなら、何人殺しても同じだ。」と同時且つ大量に殺人を犯す者が現れ始めた。

大富豪・常木王凱の呼び掛けにより、孤島・常世島に集められた者達。招かれざる客を含めて7人、常木の“常世館”で働く3人、そして常木自身の合わせて11人。「迎えの船は、4日後にならないと来ない。」という“閉ざされた空間”で、次々と殺人事件が発生。「『人を2人以上殺した者は、天使によって“即座”に地獄に堕とされる。』筈なのに、残り人数の計算が合わないのは何故?」というのが、此の作品の大きな謎となっている。

実に不可思議で、又、非現実的な設定。そういう設定は決して悪くは無いのだけれど、天使が「謎解きのだけに、無理無理に設けられた設定。」という感じがするし、何よりも「存在が無機的過ぎて、感情移入出来ない。」のが残念。最後の最後に“或る人物”が亡くなる際、現れた天使の意味合いも、判った様で良く判らなかった。天使が存在しなければ成り立たない作品だが、同時に天使の無駄遣いという感じもしてしまう。

総合評価は、星3つとする。


コメント    この記事についてブログを書く
« 「傷痕のメッセージ」 | トップ | 公衆の面前で発生した殺人事件 »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。