************************************************
<其の日から僕は、死者が視える様になったので在る。>
其れは、暗い夜の事だった。検事で在る僕・印藤累(いんどう るい)は、夜道に立ち尽くす幽霊の存在に気付いた。動揺する僕の前に現れたのは、「案内人」を自称する親し気な青年・架橋昴(かけはし すばる)。彼は此の世に未練を遺す幽霊を、或る場所に導くというのだ。其れは、真夜中にだけ開かれている弁護士事務所・・・其の名は「深夜法律事務所」と言う。
************************************************
現役の弁護士でも在る作家・五十嵐律人氏の小説「真夜中法律事務所」を読了。「真夜中にだけ開かれている弁護士事務所」というのも風変わりな設定だが、最も風変わりな設定は「『死者が見える生者が世の中には存在し、彼等は死者と会話も出来る。』という事が“事実”で在るという“大前提”。」だろう。
「死者を見える生者には、或る条件が存在する。」、「死者が此の世に留まっているのは、自身を殺害した人物が裁かれていない(本当の殺害者では無い人間が、冤罪で罪に問われている場合も含む。)からで在って、きちんと裁かれれば、死者は成仏する。」、「原則として死者が生者に(其の逆の場合も)“干渉”出来ない様に、“色々な縛り”が設けられている。」等々が、「“非科学的な設定”で在り乍ら、“現実的なミステリー”として成立させている。」という面が在る。
上記した様に、色々な縛りが設けられているのだが、五十嵐氏は“絶妙な抜け道”を取り入れている。抜け道と書いてしまうと“いんちき”みたいな印象を与えてしまうかも知れないが、決していんちきなんぞでは無く、「そう来たか!」と唸ってしまう程の絶妙さなのだ。
登場人物達の“役割”は大体想像が付いたけれど、「“或る人物”が、普通に脱出出来る部屋から脱出せず、死に到ってしまったのか?」に関するトリックこそが“絶妙な抜け道”な訳だが、“独創的”と言って良いだろう。
総合評価は、星3つとする。