1月6日付け東京新聞(朝刊)に、「CD苦境 ゲオ買い取り終了」という記事が載っていた。「中古品の買い取り&販売を手掛けるゲオホールディングス(HD)が、音楽CDの買い取り受け付けを、昨年9月末で終了した。」と言う。同社では1990年から中古CDの取り扱いを開始し、2003年位迄が買い取り&販売共にピークだったが、以降は減少が続いていた。
CDが発売されたのは、1982年10月1日。直径30cmのアナログ・レコードと比べ、12cmとコンパクトで、レーザー光を当てて反射光をデジタル信号に置き換える為、雑音が無い等の長所が在り、一気に普及した。
日本レコード協会の統計によれば、CDの生産金額は1987年にレコードを抜き、1998年のピーク時には売り上げが5,878億円に到達。ところが、其の後は減少が続き、2021年は1,232億円とピーク時の約5分の1迄落ち込んだ。
一方で、アナログ・レコードの生産実績は、2012年の45万3千枚から2021年は190万7千枚に増加する等、再び注目を集めているそうだ。
音楽CDの買い取りを終了した理由に付いて、ゲオHDの広報担当者は「年々、インターネットが普及し、サブスクリプション(定額制)を始めとした音楽配信が広がった事が一因。」と説明している。
日本レコード協会が2021年12月に実施したアンケートでは、音楽の聴取方法(複数回答)で最多は「YouTube(45%)」で、「TV(36%)」、「定額制音楽配信サーヴィス全体(30%)」と続いた後、「音楽CD(25%)」となったとか。因みに2019年の同調査では、音楽CDと回答したのは42%。2年間で、17%も下がった事になる。
今回、音楽CDと回答した割合が多かったのは40~60代の男性で、10~20代の男女は、YouTubeや定額制が中心と言う。
「抑、今の10代は、家にCDを聞く為の機器を持っていないのでは?若い世代が音楽を聞くのはスマートフォン。態々CDを買ったり、レンタルして録音する事もしない。」と、ITジャーナリストの西田宗千佳氏は語っている。
唯、欧米と比べると、日本では未だ未だ音楽CDが占める割合は多いそうだ。其の背景に在るのはレンタル制度で、CDを借りてダビングしたり、データとして取り込んだりして、安価に音楽を入手する事が出来るからで、恐らくは高年齢の人が少なからず利用しているのだろう。然し、其れも今は、定額で自分の好きな音楽を聞くサーヴィスに移行して行っている。
過去に何度か書いたが、「自分は幼い頃より、日常的に音楽を聞くという習慣が無い。」という人間。レコードやカセット・テープ、CDで音楽を聞いた事は在るが、ディープに利用して来た訳では無い。だから、定額制音楽配信サーヴィスなんて利用した事は無いし、利用したいとも思わない。
ITジャーナリストの西田宗千佳氏が「抑、今の10代は、家にCDを聞く為の機器を持っていないのでは?若い世代が音楽を聞くのはスマートフォン。態々CDを買ったり、レンタルして録音する事もしない。」と語っているが、此れは「デジタル・ゲームの遊び方」に付いても、同じ事が言えると思う。昔は「“ファミコン”等のゲーム機器を購入した上で、別途ゲーム・ソフトを購入して行く。」というのがビジネス・モデルの主流だったけれど、今は「態々ゲーム機器を購入するのでは無く、既に持っているスマートフォンに、ゲーム・アプリをインストールして行く。」というのが主流になっているので。
確かに、ずっと以前からCDよりMPプレイヤーで外出しながら音楽を聴くというケースは多くなっていましたね。私もそうやって聴いてましたから。それがやがて携帯電話にもダウンロードして聴くようになり、いまではスマホで聴くのが当たり前になってますから、仕方ないのかも知れません。
でも、ちゃんと音楽を鑑賞するなら、やはり自宅で音質のいいオーディオコンポのCDプレイヤーとステレオ・スピーカーで臨場感のある音を楽しみたいですね。特にクラシックを聴くなら絶対この方法です。Youtubeや配信やスマホではそんな臨場感は味わえません。
近年、アナログ・レコードの売り上げが伸びているのは、やはりCDにない音の柔らかさを持つアナログ・レコードの良さが年配世代に見直されているという事でしょう。つまり、“音楽が聴けたら音質など気にしない若い世代”と、“音質、音域、臨場感にこだわる中高年世代”との分断が広がって来ているのが現状ではないでしょうか。これは映画鑑賞にしてもパソコン、スマホでしかも1.5倍速で早見するタイパ世代が増えている事と無関係ではないと思います。
楽しみ方は人それぞれ、スマホや配信で聴く事を否定はしませんが、オーディオコンポでCDやレコードを聴く事の醍醐味も出来れば是非体験していただきたいと強く思いますね。
旧年中は大変御世話になりました。本年も何卒宜しく御願い致します。
自分の場合、日常的に音楽を聞くという習慣が無い事も在り(其の割には、懐メロが大好きなのですが。)、音楽を聞くツールというのは、CDで止まっている感じが在ります。
CDが出現した時は、「凄い物が現れたなあ。」と感じました。エポックメーキングで在り、“未来”を感じさせるツールでしたね。
レコード盤に針を乗せ、音楽が流れ出す迄の「ポツポツポツ」という独特の音も含め、レコードには何とも言えない“温かみ”を感じます。何事に於いても利便性を追い求めた挙句、現代は“潤い”に欠けた時代とも言われます。そんな時代だからこそ、レコードの持つ温かみに癒される人も多いのでしょうね。