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夜の住宅街で、大学生が撲殺された。目撃証言と凶器に残った指紋、傷害事件の前歴から、直ぐに割り出された容疑者・倉田忠彦(くらた ただひこ)。だが、捜査に乗り出した船橋署の刑事等は、殺人とは縁遠い倉田の愚直で禁欲的な素顔に違和感を抱く。更に、背後には海水浴場で起きた不審死と連続婦女暴行という、日時も場所も異なる2つの事件が複雑に絡み合っている事が判明する。そんな中、捜査本部に圧力が掛かり・・・。
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翔田寛氏の小説「黙秘犯」を読了。“不思議さを感じさせる状況”で発生した撲殺事件に付いて、捜査が進んで行く。無関係と思われた出来事が、ストーリーの展開と共にリンクしているのが明らかとなって行く。
ストーリーの半ば位で、「こういう構図なんだろうな。」という予想は付く。そして、結果的には、そう外れてはいなかった。だから、“謎解き”という点では物足りなさを感じる内容かも知れない。でも、そういう事を補って余り在る“ストーリー展開の面白さ”が在る。
「“彼女”は“彼”と結婚しないんだろうけれど、じゃあ“彼女を守った彼”と結婚するのだろうか?」とか、「結局、“彼女”の実家はどうなるんだろう?」といった、気になる点が幾つか残る。「そういう事を明らかにせず、読者の想像に任せる。」という事なのだろうが、個人的には“結末”を知りたい。
自分が注目している「ミステリー関連の年間ブック・ランキング」の2つには、少なくともベスト10に顔を出していなかった。「『2019週刊文春ミステリーベスト10 国内編』の1位に選ばれた「ノースライト」よりは、個人的に面白かった。」のだけれど・・・。
総合評価は、星3.5個とする。