今日は、昨日放送されたNHKの「おんな城主 直虎」【動画】の第33回「嫌われ政次の一生」に付いて書いてみたい。
井伊直虎を“女城主”として描いた此のドラマ、第1回を見終えての感想は「まあまあ。」という感じだったが、回を重ねる毎に「面白く無いなあ。」と感じる様になった。実際、最初は一緒に見ていた家人は、途中から見るのを止めてしまったし。
「面白く無いなあ。」と感じる要因は幾つか在るけれど、「井伊直虎という人物に馴染みが無い。」というのも在る。何しろ此の人物、不明な点が余りにも多いのだ。以前放送された或るラジオ番組で、井伊直虎に付いて研究している人に、井伊直虎に関する質問が色々されていたが、「記録が残っていないので、判らないんですよ。」を連発していたのが印象的だった。本当に記録が余り無く、井伊直虎が男性なのか女性なのか自体も確定していない状況。(放送開始以降、「男性なのではないか?」と思わせる証拠が次々に見付かっている。)
そんな人物を取り上げているのだから、“文献等に基づく人物描写”というよりも、“歴史的事実を元に「こんな人だったんじゃないかなあ。」という想像による人物描写”という色合いが強く、又、「大河ドラマで女性が主人公の場合、概して“歴史”を描くというよりも、“一家庭”を描くという事に主眼が置かれてしまい、内向きな感じになってしまい勝ち。」という放送前の懸念も現実化してしまった事も在り、「面白く無いなあ。」と感じる様になったのだ。
ファンの方には申し訳無いけれど、常にギャアギャア騒いでいる様な柴咲コウさんの一本調子な演技も、作品世界に集中出来ない要因。正直、彼女に“大河の主役”は荷が重過ぎた様に感じている。
そんな「おんな城主 直虎」だが、悪い点許りでは無い。井伊直虎の幼馴染みにして、長じてからは井伊家の筆頭家老となった小野但馬守政次役の高橋一生氏が、実に良い演技を見せて来たからだ。父親・小野和泉守政直(吹越満氏)同様、“井伊家の奸臣”として描かれる事が多い政次。そういった複雑な立場の人間を、彼は気負う所無く演じて来た。所作も然る事乍ら、“目の演技”が上手な役者だと思う。
其の政次が、昨夜放送された「嫌われ政次の一生」で殺された。詳細は此方に記されているので読んで戴けたらと思うが、ざっくり書くと「井伊家の筆頭家老の立場に在り乍ら、今川家のスパイの様な動きをして来た政次。然し、今川家の立場が危うくなった事で、今川家と対立する徳川家康に寝返る事を決める。井伊直虎と話し合い、井伊家の井伊谷城へ徳川勢を受け容れ様とするのだが、徳川勢の先導役を務めた近藤康用の謀略により捕らえられ、磔刑に処せられる。」という内容。
父子共々“井伊家の奸臣”として描かれる事が多い政次だが、此のドラマの中では「井伊家を守る為、他の家臣から嫌われ様とも、今川家のスパイ役を務めて来た。」という描かれ方をしている。「嫌われ政次の一生」でも井伊家、と言うよりも幼馴染の直虎を守る為、“井伊家の裏切り者”という汚名を敢えて背負い込み、磔刑に処される。そんな政次の思いを知っているからこそ、直虎は(処刑人から)槍を奪い取り、自らの手で政次を突き刺し、「地獄へ落ちろ、小野但馬!」と“裏切り者を罵る演技”をし、其れに対して政次も“裏切り者としての演技”を続けた上で絶命する。見ていて、涙が止まらなかった。
「おんな城主 直虎」の中では、最大の山場と言える。“ドラマとしては”、強く印象に残る場面だった。素晴らしい演技を見せて来てくれた高橋氏には、「御疲れ様。」の言葉を贈りたい。
だが、一方でこんな思いも在る。「直虎が男性だった可能性が高くなった中、“男女の愛情の交錯”という捉え方で、磔刑シーンを描くというのはどうなのかなあ。」と。「直虎が自ら槍を持って、政次を突き刺した。」という史実は、自分が知る限り「無い。」と思うし、「政次の専横を快く思っていなかった徳川家康により、政次は捕らえられ、そして磔刑に処された。」というのが史実として残っているだけだから。なので、“ドラマとしては”強く印象に残る場面だったけれど、“歴史”という観点からすると「うーん・・・。」という思いが。
とは言え、感動的な場面で在り、自分が涙してしまったのは事実で在る。
昨年の大河が良かっただけに、「おんな城主 直虎」は放送開始前から大きなハンデを背負っていた感は在りますね。又、此のドラマの肝で在る「直虎=女性説」も非常に危うい基盤の上に乗っており、そういう意味でも「うーん・・・。」と感じてしまう視聴者は多いのかも。
唯、今回の「嫌われ政次の一生」は心の残る内容でした。幼馴染の“鶴”と“亀”を、共に若くして失ってしまう直虎の気持ちを思うと、何とも遣り切れなかった。況してや、其の大事な“友”の命を自らが奪わなければならなかったのですから・・・。
「風雲児たち」がドラマ化されるんですか!?昔、原作を良く読んでいたので、ドラマ化されるというだけも嬉しいのに、其の脚本を三谷氏が担当するというのでは、見ない訳にはいかないです。
私はそこそこ面白く見ております。
脚本が「仁」「ごちそうさん」「とんび」「天皇の料理番」の森下佳代子氏で、どうもこの方、高視聴率を取ったドラマの後の逆風を受けがちな脚本家さんと噂されております(^^;)
ごちそうさんなどは「あまちゃん」の後でどうなるか心配だったんですが、導入部は退屈に感じられたものの、後半大阪編に突入してから大変面白く見させて頂きましたので、大河ドラマも後半が大変楽しみです。
直虎女性説は江戸時代に井伊家の参勤交代の折に大名から厚遇を受けるために龍潭寺が「ちょっと盛った」話を書き残したのがきっかけと言う説があるようですね(^^;)
「ちょっと盛った」どころじゃない気もしますが(苦笑)歴史とはこういう風に作られて行くのだと語る上でも面白いドラマと思います。
年末には三谷幸喜氏脚本の みなもと太郎氏原作「風雲児たち」がドラマ化されるという事で大変楽しみにしています。