当ブログを立ち上げたのは2004年7月17日で、最初の記事は「社会保険庁」だった。其れから「18年11ヶ月10日目」の今日、通算記事数は「7千件」に達した。立ち上げた時はこんなにも続けられるとは思ってもいなかったが・・・感無量だ。覗いて下さっている方々に、唯々感謝で在る。
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シングル・マザーの麦野早織(安藤サクラさん)は、息子の湊(黒川想矢君)と大きな湖の在る町に暮らしている。湊は同級生の星川依里(柊木陽太君)と仲が良く、子供達は自然の中で穏やかな日常を過ごしていたが、或る日、学校で喧嘩が起きる。双方の言い分は食い違い、大人やメディアを巻きこむ騒動に発展して行き・・・。
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第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した映画「怪物」を、映画館で観て来た。脚本を担当したのは坂元裕二氏、そして監督は是枝裕和氏。
「小学5年の息子・湊が、学校で虐められている様だ。」、そう感じたシングル・マザーの早織は湊を問い詰め、担任の保利道敏(永山瑛太氏)が息子に暴言を吐き、暴力を振るっていた事を知る。抗議する為に学校を訪れた早織だったが、孫を事故で亡くした許りの校長・伏見真木子(田中裕子さん)は無気力で当事者意識が全く無く、担任の保利も不貞腐れた言動に終始。他の教師達も早織をモンスター・ペアレント扱いし、“逃げ”に走る。結局、保利は自らの非を認める方向に向かうが・・・というストーリー。
“現在”と“過去”が、何度も入れ替わる。其の度に幾つかの“同じ場面”が登場するのだけれど、“視点”が変わっており、其の事によって“真実”が明らかになって行く。最初は不貞腐れた言動を見せ、“絶対的な悪”と(観客が)思った担任の保利も、実は全くそうでは無い事が判明。
「では、何故、保利は悪者にされたのか?」という事が問題になるのだが、彼を嵌めたと思われる湊や依里も、本当の意味で“悪”とは捉えられない事実が、次々と明らかに。結局、「表面的に“悪”と思える者達では無く、DVを振るっていた(と思われる)父親や、面白半分に虐めを行っていた同級生達こそが、本当の意味での“悪”ではなかろうか?」と、感じる観客は多い事だろう。又、登場人物達が抱える秘密、事故の真犯人やDV、性的志向等が明らかになって行くが、此れも表面的な部分“だけ”では判らない事で在り、「怪物」では「『表面的な部分だけでは、本当の事は判らない。表面的な部分だけで、ああだこうだ判断すべきでは無い。』という事を、作り手は訴えたいのではないか?」という気がした。
無気力で、当事者意識が全く無い校長役を演じた田中裕子さんの不気味さが、実に印象的。そんな彼女が最後の最後に見せた人間らしさも又、とても印象的だった。
そして、何よりも黒川想矢君と柊木陽太君という2人の子役が存在感を示している。可愛らしい彼等が見せる“翳り”の部分が余りにもギャップが在って、グイグイと作品の世界に引き込まれて行った。是枝作品を観るのは「誰も知らない」、「そして父になる」、「万引き家族」に次いで4作品目だが、此れ等の全てに共通するのは「登場する子供達が皆、非常に魅力的。」という事だ。
良い作品なのは確かだが、個人的には「126分」という上映時間は長過ぎた。「現在と過去が何度も入れ替わる事で、次々と事実が明らかになって行く。」というスタイルなので仕方無いのかも知れないけれど、同じ場面が繰り返される事も在って、冗長さを感じてしまったので。100分位の“尺”にした方が、スッキリして良かった様に思う。
総合評価は星3.5個。