「板前や理容師等、手に職を付けた人は、一生食いっぱぐれる事は無い。」と、自分が幼い頃は言われていた。でも、今となっては、そんな事は無くなって来ている。時代の移り変わりと共に、「ずっと“安泰”。」と思われて来た物が、次々と崩れ去って来ている。
子供の頃、百貨店は普段着よりも良い格好をさせられ、家族で訪れる特別な場所だった。近所の店では売られていない様な物が数多く置かれていて、両親がそういった物を見て回っている間、子供は玩具売り場や屋上の遊び場(ゲーム・コーナーや遊具が設けられていた。)で時を忘れて過ごしたもの。定期的に珍しい動物や秘宝等、魅力的な展示が行われていたりしたし、色々見て回った最後は、家族で“大食堂”で食事をするのが、実に楽しみだった。“娯楽が少なかった時代”という事も在るが、百貨店は子供だけで無く、大人にとっても“ワンダーランド”だったし、当時は「百貨店=ずっと安泰な場所。」と多くが信じて疑わなかったろう。
1月26日、山形県内唯一の百貨店「大沼山形本店」(山形市創業)が閉店した。「大沼」という存在を自分は全く知らなかったのだけれど、創業は江戸時代の「1700年」で、国内の百貨店としては松坂屋、三越に次いで3番目に古い老舗なのだとか。
日本百貨店協会によると、「大沼山形本店」の閉店により、全国の県庁所在地で同会加盟の百貨店が消滅したのは山形市が初めてと言う。百貨店に足を運ばなくても、色々な物が買えたり、見られたり、食べられたりする時代。「他とは違う場所。」という“優位性”が薄れてしまい、百貨店にとっては非常に厳しい状況だ。