松本哲也氏が書いた「空白」を読み終えた。友人から、「凄絶な人生を送って来たミュージシャンが書いた本で、久し振りに泣けた。」と推奨されたからだ。
読む前に著者の経歴を見た。今年で28歳になる彼だが、その人生は、一般人が一生かかっても経験しないであろう程の凄絶さに満ち溢れている。父親はヤクザ、母親は覚醒剤中毒という家庭環境で彼は生まれる。彼が4歳の時に、家庭は崩壊し、母子は母方の祖父母の家に転がり込む事となる。祖父母の家には、離婚した伯父の娘(従姉妹)も居た。やがて、母は覚醒剤の禁断症状と後遺症から精神を病み、強制入院させられる事になるのだが、以前より家庭内暴力を繰り返していた従姉妹の怒りの矛先が、それを機会に彼に向かう様になる。性的虐待どころか、生命の危機を感じる事も有ったという。学校では、同級生からは苛められ、廻りの大人達からは蔑まれ、行き場を失った彼は、非行行為に走る様になる。そして、傷害事件を起こし、鑑別所へ送られる。結局、彼は教護院で巡り合った”音楽”によって立ち直りを果たし、ミュージシャンとしてメジャーデビューを果たす迄になるのだが、その過程に在ったのは「求めても裏切られ、愛しても傷付けられる」思い。母親を憎みながらも、何処かで愛を追い求める彼。その複雑な思いを、彼はこんな風に書いている。
「虐待を受け続けた少年少女は、虐待を与える両親を責めずに、自分自身を責めるという話を聞いた事が有る。余りに悲しい話だ。でも、僕にもそんな気持ちが有った。子供から見れば、僕の両親は自分の事だけを優先したいい加減な親かもしれない。でも、父や母を心底憎む事は出来なかった。攻撃のベクトルは、何時も自分自身に向かっていた。」
愛した筈の女性達とは別れを繰り返し、愛を求め続けた母親は拒食症による衰弱死で生を終える。彼に「辛過ぎて、悲し過ぎて、思い出す事の出来ない”空白”」を残して。そして、教護院時代の彼に、音楽の魅力を教え、メジャーデビューした彼を、精神的にもバックアップしてくれた一人の音楽講師。そんな彼女も、母の死の翌年に癌で逝ってしまう・・・。
物凄い人生だと思う。良くぞ、この様な状況から立ち直り、ミュージシャンとしてメジャーデビューする迄になったとは思う。しかし、読み終えて、残念ながら涙は出なかった。彼の悲惨な境遇に同情もしたし、気の毒さも感じた。唯、何かスッキリしないのだ。人生の岐路に於ける、彼の選択に身勝手さを感じてしまう部分が多々有るのかもしれない。虚飾とは言わない迄も、話が出来過ぎていると感じてしまう部分(彼女の飼い犬が死んだ件等。)も有る。穿った見方かもしれないが、何か心にモヤモヤ感が残った。
彼は、「今も施設で頑張っている沢山の子供達の為に歌いたい。」と語っている。「歌う事で多くの人に、世の中の片隅にはこんな現実が在る事を知って貰いたい。施設の子供達や、其処から社会に出た人達が、自信を持って生きて行ける力になりたい。」とも。
そして、最後に彼はこう結んでいる。
「僕はまだまだ不安の中で、満たされない心を抱えたまま生きて行くだろう。何時か必ずこの空白を、大きな愛に変えてみせたい。」
彼の言葉を信じてみたい。
読む前に著者の経歴を見た。今年で28歳になる彼だが、その人生は、一般人が一生かかっても経験しないであろう程の凄絶さに満ち溢れている。父親はヤクザ、母親は覚醒剤中毒という家庭環境で彼は生まれる。彼が4歳の時に、家庭は崩壊し、母子は母方の祖父母の家に転がり込む事となる。祖父母の家には、離婚した伯父の娘(従姉妹)も居た。やがて、母は覚醒剤の禁断症状と後遺症から精神を病み、強制入院させられる事になるのだが、以前より家庭内暴力を繰り返していた従姉妹の怒りの矛先が、それを機会に彼に向かう様になる。性的虐待どころか、生命の危機を感じる事も有ったという。学校では、同級生からは苛められ、廻りの大人達からは蔑まれ、行き場を失った彼は、非行行為に走る様になる。そして、傷害事件を起こし、鑑別所へ送られる。結局、彼は教護院で巡り合った”音楽”によって立ち直りを果たし、ミュージシャンとしてメジャーデビューを果たす迄になるのだが、その過程に在ったのは「求めても裏切られ、愛しても傷付けられる」思い。母親を憎みながらも、何処かで愛を追い求める彼。その複雑な思いを、彼はこんな風に書いている。
「虐待を受け続けた少年少女は、虐待を与える両親を責めずに、自分自身を責めるという話を聞いた事が有る。余りに悲しい話だ。でも、僕にもそんな気持ちが有った。子供から見れば、僕の両親は自分の事だけを優先したいい加減な親かもしれない。でも、父や母を心底憎む事は出来なかった。攻撃のベクトルは、何時も自分自身に向かっていた。」
愛した筈の女性達とは別れを繰り返し、愛を求め続けた母親は拒食症による衰弱死で生を終える。彼に「辛過ぎて、悲し過ぎて、思い出す事の出来ない”空白”」を残して。そして、教護院時代の彼に、音楽の魅力を教え、メジャーデビューした彼を、精神的にもバックアップしてくれた一人の音楽講師。そんな彼女も、母の死の翌年に癌で逝ってしまう・・・。
物凄い人生だと思う。良くぞ、この様な状況から立ち直り、ミュージシャンとしてメジャーデビューする迄になったとは思う。しかし、読み終えて、残念ながら涙は出なかった。彼の悲惨な境遇に同情もしたし、気の毒さも感じた。唯、何かスッキリしないのだ。人生の岐路に於ける、彼の選択に身勝手さを感じてしまう部分が多々有るのかもしれない。虚飾とは言わない迄も、話が出来過ぎていると感じてしまう部分(彼女の飼い犬が死んだ件等。)も有る。穿った見方かもしれないが、何か心にモヤモヤ感が残った。
彼は、「今も施設で頑張っている沢山の子供達の為に歌いたい。」と語っている。「歌う事で多くの人に、世の中の片隅にはこんな現実が在る事を知って貰いたい。施設の子供達や、其処から社会に出た人達が、自信を持って生きて行ける力になりたい。」とも。
そして、最後に彼はこう結んでいる。
「僕はまだまだ不安の中で、満たされない心を抱えたまま生きて行くだろう。何時か必ずこの空白を、大きな愛に変えてみせたい。」
彼の言葉を信じてみたい。
彼は同県人で年も私とそんなに変わらないけれど・・・。「五体不満足」に感じたものとなんとなく重なる思いです。
私も最後の言葉を信じてみようと思います。
私も実は、ば○さんと同じく『空白』を読んだ後にどこかすっきりしないものを感じました。
もしかしたら、松本さんの過去の非行行為によって被害を受けた人に対し『現在の松本さんはどう言う気持ちなのか?』が書かれていなかったからじゃないかなと私は思っています。松本さんの過去の非行行為を非難するつもりは全くないのですけれど。
とにもかくにも、松本さんの言葉を信じて応援していく姿勢が一番大事ですよね。松本さんの活動にこれから注目していきたいと思っています。
生で歌声を聴かれたんですね。自分はCDで聴いたのですが、彼が今迄歩んで来た人生をついつい思い浮かべてしまい、一層心に沁みました。
記事でも書いた様に、彼の生きて来た道筋には些か身勝手さを感じたりもして、素直に感動は出来なかったものの、”今”を必死で頑張っている彼と、そしてそんな彼の姿を知って頑張ろうという気持ちを持った人達の為にも、頑張って欲しいと思っています。
他者に何かを伝えるというのは非常に難しい事。音楽という方法で、自分なりのメッセージを発信して行ける事に羨ましさを感じます。
これからも宜しく御願い致します。