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三椏(ミツマタ):冬になれば葉を落とす落葉性の低木で在り、沈丁花科の三椏属に属する。中国中南部・ヒマラヤ地方が、原産地とされる。一年枝の樹皮は、和紙や紙幣の原料として用いられる。
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「楮(コウゾ)や三椏と言えば、日本では古くから、其の樹皮が和紙の原料として用いられる。」事で知られているが、我が国の紙幣の原料には三椏、そして耐久性向上の為のマニラ麻が使われている。で、其の三椏は、略全てが山深いネパールの農村で生産され、日本に輸入されているそうだ。先日、我が国では新紙幣が発行された許りだけれど、其れに合わせて彼の地では、三椏を増産中と言う。7月25日付け東京新聞(夕刊)に、「日本の御札 ネパール生まれ ~新紙幣に合わせ増産中」という記事が載っていた。
首都カトマンズから南東に約260kmの丘陵地帯パンチタル地区は、紅茶産地のインド・ダージリンに近いエリアだが、此処が三椏生産の一大拠点。約100世帯が三椏を栽培する農地が在り、今年は既に日本向けに合計約20トンを納入したそうだ。
「標高2千m以上で、水捌けが良く、強い日差しを浴びない西向きの斜面。」、一般的には農業に不向きな此の環境が、三椏生産には適している。ネパールでの三椏栽培は、日本の国立印刷局に紙幣の原料を納入する政府刊行物専門書店「かんぽう」(大阪市)が、貧困に苦しむ農家の支援事業として、1990年から取り組んで来た。買い取り価格を毎年、現地の物価上昇率以上に引き上げ、生産者を頻繁に訪れて、挿し木用の原木の選び方や収穫、乾燥等を手厚く技術指導して来たそうだ。
「国内に留まらず、世界の貧困地帯へも支援の手を伸ばす。」というのは、非常に良い事だと思うし、日本人として誇らしく思う。「情けは人の為ならず」と言うが、そういう“下心”とは無関係に、“無理の無い範囲での支援”を行って欲しい。
尚、我が国の三椏需要は、新札発行に合わせて既にピークを迎え、緩やかに減る見込み。三椏の販路拡大が、彼の地の今後の課題となるが、ネパールでも新紙幣発行の計画が在り、三椏を活用出来ないか模索しているそうだ。