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多摩川の河川敷で発見された男性の猟奇死体。顎の下から胸骨迄が縦一文字に切り裂かれ、肺以外は殆どの臓器が抜き取られている。口に石が押し込まれた上、火を点けられて黒焦げになった死体の下からは、銀製の蜻蛉のペンダント・ヘッドが発見された。
警視庁捜査第1課の警部補・鏑木鉄生(かぶらぎ てつお)が率いる4人の特別捜査班は再結成し、手掛かりを元に群馬県の飛龍村へ向かう。其処は蜻蛉の里として有数の沢が在る村で、被害者は蜻蛉研究に熱心だった村出身の青年・河津遊介(かわづ ゆうすけ)と判明する。
だが彼の死後、幼馴染みで盲目の女性・水澤泉美(みずさわ いずみ)に、遊介本人からの電話が掛かって来ていた。鏑木達は群馬県警と協力して、不可解な謎の解明に乗り出すが・・・。
村で起きた20年前の殺人事件、ダム建設、3人の幼馴染み、幻の巨大蜻蛉・・・複雑に絡まる糸から、鏑木達が導き出す「真実」とは!?
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小説「デッドマン」で第32回(2012年)横溝正史ミステリ大賞を受賞し、同作品で文壇デビューを果たした河合莞爾氏。出版社で編集者として働いている彼が、第2作として刊行したのが、「デッドマン」の続編とも言える「ドラゴンフライ」だ。
「群馬の山奥に迷い込んでしまった男の目の前に現れたのは、東京に在る自宅及び町並みと寸分違わぬ光景だった。」、「1m近い大きさの蜻蛉を見た。」、「何度も死者からの電話を受けた。」等、“実際には在り得ないシチュエーション”が登場する此の小説。「SF小説?其れともオカルト小説?」といった思いで読み進めて行ったのだが、“実際には在り得ないシチュエーション”が最後には“納得のシチュエーション”となる。こじつけっぽい部分も無いでは無いけれど、デビュー2作目の新人とは思えない、見事なミステリー。
「河合作品は、テンポの良いスピーディーな展開と、登場人物達のコミカルな遣り取りが最大の魅力。」との事だが、確かにテンポの良さ&スピーディーな展開は心地良い。唯、登場人物達のコミカルな遣り取りがストーリーに減り張り効果を付けてはいるものの、少なくとも此の作品で言えば、もう少しコミカルな部分を減らした方が良かった様に感じる。しんみりとした展開に少々浸っていたいのに、コミカルな遣り取りが唐突に入り込んでしまった事で、「何だかなあ・・・。」という残念さが在ったから。
総合評価は、星4つ。