たぶんどの時代にも「最近の若いモンは・・・」という感覚やら言い方があって
「何もわかってない」「話が通じない」とお互いに思っている、というのは
普通の事なのかもしれません。
スタンダード音楽の現場でも感じるのは「世代の断絶」です。
40歳より下の世代のジャズ・ミュージシャンは、留学経験者も多く、技術や音楽性にも
優れていると思いますが、彼らのライブに行ったりCDを買ったりした場合に気になるのは、
私たちが長年なじんで来たスタンダード曲が、ほんの数曲しか入っていなくて
ほとんどがオリジナル曲で構成されている、ということ。 きっとたくさん言いたいことが
あるのでしょう。既にある曲では飽き足らず、それよりも良い曲を作れる自信と
作りたい意欲が強いのでしょうね。 けれど、その人のコアなファン以外で、初めて聴いた場合には
「知ってる(やってる)曲だ!へえ、こんなアプローチもあるのか」というのが楽しみなので、
知らない曲ばかりでは、いくら優れた演奏でも、頑張っておとなしくお付き合いしているだけです。
私はね。
複数のピアニストが話していましたよ。
「たまたま機会があって、息子や娘みたいな、いやそれより年下の人と共演すると
みんなウマイんだよねえ。 でもその人たちは、やっぱりオリジナル志向が強いみたい。
ボクらとしたら、スタンダードをどう料理してくれるんだろうって興味のほうがあるんだけどなあ。」
駆け出しのころには、まだ河辺さんたち「進駐軍世代」がお元気で(つまり、日本のジャズとしては
「戦前派」に次ぐ第二世代でしょうか?)、共演させていただく私たちの前後の世代に、その時代の
裏話をしたり、「イヤ~~あの時の赤ん坊が今一緒にステージに出てるなんざオツなもんだね」
なんていう会話もあり・・・。演奏家は何とか先輩に認められるような、ビックリさせるような
演奏をしたいと思い、歌い手は「先輩よりもっと上手くなりたい」「ウケたい」「共演者に
認められたい」と思って工夫をこらしていたような気がします。
でも今、そんなこと、どうでもいいんですね。自分のやりたいことにさえ邁進できれば。
それも一つの生き方ではあるな、確かに。 ちょっと寂しいけど。
そんなワケで毎日「何の曲を歌うか」は私にとっては物凄く重要な問題なのです。
先輩に「こんな難しい歌を知ってるなんて、ホントに良く勉強するねえ」なんて言われたらアウト
「いやあ、今日のニアネスオブユーは良かったねえ」と言われたら「やった~」です。
『正しいスタンダード・ラバー』として、今夜も小林洋さんと一緒に、限りなく美しい
アメリカン・クラシカル・スタンダードに取り組みたいと思います