十二因縁とは、人間の苦しみ、悩みがいかにして成立するかということを考
察し、その原因を追求して、十二の項目の系列を立てたものである。つまり。
縁起の理法を十二の項目に分類したものである。
無明 (無知)
取 愛 受 触 六 名 識 行
処 色
(潜在的形成力、生活作用)
(識別作用)
(名称と形態、または精神と物質、心身)
(心作用の成立する六つの場、すなわち眼・耳・鼻・舌・身・意)
(感覚器官と対象との接触)
(感受作用)
(盲目的衝動、妄執、渇きの欲望にたとえられるもの)
(執着)
川作一老死 (無常なすがた)
順次に、前のものが後9ものを成立させる条件となっている。また、逆に
順次、前のものが滅すると、後のものも滅する。
律蔵等の記述によると、
そのとき世尊は、ネーランジャラー河の岸辺に、菩提樹のもとにおられ
た。
はじめて、さとりをひらいておられ・たのである。
世尊は、七日のあいだずっと足を組んだままで、解脱のだのしみを享け
つつ、座しておられた。その七日が過ぎてのち、その瞑想から出て、その
夜のはじめの部分において、縁起の理法を、「順の順序」にしたがって。
つて執着があり、執着によって生存があり、生存によって出生があり、出
生によって老いと死・憂い・悲しみ・苦しみ・愁い・悩みが生ずる。この
ようにしてこの苦しみのわだかまりがすべて生起する。
に接創によって感受作用があり、感受作用によって妄執があり、妄執によ
そわから、た、「逆の川にしたがって、よく考えられた。貪欲をなくすことによって無明を残りなく止滅すれば、生活作用が
止滅する。
生活作用が止滅するならば、識別作用が止滅する。識別作用が止滅する
ならば、名称と形態とが止滅する。名称と形態とが止滅するならば、六つ
の感受機能が止滅する。六つの感受機能が止滅するならば、対象との接触
も止滅する。対象との接触が止滅するならば、感受作用も止滅する。感受
作用が止滅するならば、妄執も止滅する。妄執が止滅するならば、執着も
止滅する。執着が止滅するならば、生存も止滅する。生存が止滅するなら
ば、出生も止滅する。
がすべて止滅する。
そこで、世尊は、この真理の意義をさとって、そのとき、つぎのような
〈詠嘆の詩〉を唱えられた。
努力しているバラモンにもろもろの理法が現われるならば、
かれの疑惑はすべて消滅する。
原因(と結果との関係をはっきり念せた縁起の理法)をはっきりと知っているのであるから。