「ホリスティック健康学」と、健康実現へのアプローチ
ホリスティック医学の身体観・健康観に基づく“健康学”を―「ホリスティック健康学」と言います。人間が霊・精神・肉体の3次元の構成要素から成り立っている以上、真の健康を得るためには、霊・精神・肉体のそれぞれに対する働きかけが必要となります。
世間一般に見られる健康法でのアプローチは、その大半が肉体次元、よくても精神次元どまりです。しかし、それでは身体全体の健康は確立されません。
3つの次元の健康法・治療法
〈霊的レベルへのアプローチ〉
ホリスティック健康学における“霊的レベル(次元)”へのアプローチとは、具体的にどのようなものなのでしょうか。結論を言えば―「高次元の価値観・人生観・世界観に立って純粋で利他的な行為を実践し、質の高い霊的状態をつくり出す」ということです。そうした私利私欲を拭い去ったところから生じる至福の思い・無上の喜び・奉仕人生に対する生きがいこそが、まさに霊的レベルが健全な状態にあることを示しています。人間がこのような状態に至るとき、その人の霊的領域(高次の心)は、最も活性化されることになります。
大気中から取り入れられた「霊的エネルギー」が、その人の“霊的領域”を満たし、身体全体に対する「根源的な生命エネルギー」となります。これが霊的に健全であるということですが、そうした状態を常につくり出せるようになるためには、長い期間にわたる自己克己の歩みと、純粋な利他的行為の実践というプロセスが必要となります。つまり本人の日頃の内省的努力と、奉仕の実践による霊的成長が不可欠となるのです。「霊的成長」は自分自身の努力によってなすものであり、人まかせで達成できるものではありません。それは人生をかけて少しずつ獲得していく最も難しいことなのです。この霊的領域での健全化・向上とは、実は多くの宗教で言われてきた“魂の成長”に他なりません。
残念ながら大半の現代人は、この肝心な霊的部分に多くの問題と未熟さを抱えています。霊的健全さからは、大きく懸け離れています。そのためほとんどの人々が―「根源的な生命エネルギー」を枯渇させることになっています。
霊的部分に対する治療は、一般に言う“エネルギー療法”の類に頼らなければなりません。その中で最も期待できる治療法が、「純粋なスピリチュアル・ヒーリング」です。(*現在では「スピリチュアル・ヒーリング」の名称で行われる治療が流行していますが、その大半が金銭目当ての不純なもので、本物のスピリチュアル・ヒーリングとは認められません。)よく知られた“気功治療”も代表的なエネルギー療法ですが、現実的にそのエネルギーが患者の霊的部分にまで届くことはありません。中途半端なレベルにとどまっています。
〈精神レベルへのアプローチ〉
精神レベルでの健全な状態とは、不安や恐れ・心配などのマイナスのストレスがなく、平静でゆったりとした心理状態を保っていることを言います。しかし実際には、現代人の多くが、何らかの不安や恐れ・心配を抱え込んでいます。現代社会には絶えず不安がつきまとい、心の安らぎ・平安を維持することが難しくなっています。不安や恐れなどのストレスによる感情的な乱れは、健康に大きなマイナスを及ぼします。それは、霊的領域から流されてくる「生命エネルギー」の流れを遮断することになるからです。
現在の“心身医学”では、こうした精神状態の不調和に対して、瞑想や暗示・音楽・薬物などを用いたさまざまな治療を施します。心身医学はそれなりに成果を上げていますが、精神レベルの完璧な治療からは、ほど遠いのが実状です。
一方、世の中には、いつも明るい健全な精神状態を維持している人々がいます。ストレスを上手に解消し、不安や恐れとは無縁な人生を送っています。そうした人々に共通するのは―「確固たる人生観・信念・生きがいをもっている」ということです。明確な目的に向かって毎日の生活を完全燃焼している人間の精神状態は、マイナスのストレスからは無縁なものとなり、溌剌としています。
このような現実を見ると、精神状態の安定には、霊的レベルでの内容が大きく影響していることが分かります。精神レベルでの健康を維持するためには―「より高い人生観・価値観・信念に基づく生き方をするのが一番よい方法」ということになります。
したがって単に精神レベルだけに焦点を合わせて、さまざまな治療法を施しても限界があります。広い視野・崇高な価値観・純粋な奉仕精神と、そこからもたらされる“喜び・生きがい”こそが、健康にマイナスとなるストレスから私たちを解放してくれることになるのです。つまり精神レベルの健全性を保つためには―「瞑想などの方法論より、ものの考え方・価値観の方が重要である」ということなのです。“精神レベル”へのアプローチは、精神療法的な面だけでなく、霊的な面からも行う必要があるのです。
〈肉体レベルへのアプローチ〉
“肉体レベル”での健全化・正常化のためのアプローチは、すでに世間一般に“健康法”として行き渡っています。その代表的なものが本書で取り上げている「食事療法(栄養療法)」です。それ以外にも運動療法や手技療法・温泉療法・水療法・光線療法・ハーブ療法・アロマセラピーなどがあります。
「ホリスティック健康学」はホリスティック医学に基づく健康学で、人間の3次元の構成要素すべてに対するアプローチを目的としています。
ホリスティック健康学におけるアプローチ
ホリスティック健康学におけるアプローチ
3次元への同時アプローチ
ホリスティック健康学における1つの重要な点は、3次元へのアプローチは、常に同時に並行して行われなければならないということです。霊・精神・肉体という3次元に対するトータル的アプローチ、ホリスティックなアプローチが必要であるということです。
世間一般に見られる健康法の多くは、単に“肉体レベル”に対するアプローチだけにとどまっています。ある1つの手段を強調し、それを実行することで健康が得られると言いますが、間違っています。
ホリスティック健康学では―「常に3次元を対象とした健康法が、同時に行われなければならない」と考えます。本書で取り上げる「ホリスティック栄養学」は“肉体次元”での優れた治療法ですが、他の次元のホリスティック療法と併せて進められなければなりません。ホリスティック栄養学だけで健康を確立することはできないのです。
心・食・運動・休養の比率は、「4:2:2:2」
先に4つの健康の条件について述べました。健全な心・健全な食・適度な運動・十分な休養は、人間が健康であるための4つの柱であり、必要条件です。では、これらが健康に及ぼす影響は、どの程度のものなのでしょうか。結論を言えば―「4:2:2:2」の比率になります。
心・食・運動・休養を、人間の3次元の構成要素と照らし合わせて考えてみましょう。まず「食」と「運動」が、肉体レベルの健康状態を決定的に左右することは明白です。しかしそれらは肉体レベルだけに限定されるものではなく、精神レベルにも少なからず影響を及ぼしています。次に「休養」も肉体レベルだけでなく、精神レベルに影響をもたらすことが分かります。
さて、もう1つの要因である「心」ですが、それは厳密に言うと人間の有する心的要因のことを意味しています。心的要因は、人間の「霊的レベル」「精神レベル」という2つの構成領域に存在し、この部分の健康状態を決定します。当然、心の健全さは、身体全体の健康状態を大きく左右することになります。
こうしたさまざまな点をトータルして考えたとき、健康全体に対する心・食・運動・休養の影響力の割合は―「4:2:2:2」になるということです。「ホリスティック健康学」は、心・食・運動・休養によって健康レベルが決定されるだけでなく、それら1つ1つの要因が、どのくらいのウエイトをもっているかについても明らかにしています。