「頭の中の霧が晴れるようだ」
テニスプレーヤーのノバク・ジョコビッチ(セルビア)を世界1位に押し上げたのが食事の改善だった。食べるものを見直した途端に頭がクリアになって体のキレが増し、夢のグランドスラム制覇を成し遂げている。
実は、最新の研究で、脳の働きは食事によって大きく左右されることが分かってきた。ジョコビッチのケースでは、頭に霧をつくっていた正体が小麦に含まれるグルテンだった。グルテンを取り過ぎると、脳が障害を受けることが分かったという。
「グルテンが分解されてできるエクソルフィンという物質はアヘンに似た作用を持ち、脳の関門を突破して脳に入り込み、オピオイド受容体と結合します。オピオイド受容体は、麻薬の受容体。それらが結びついている間は多幸感を生じる一方、なくなると不安になる。その結合は、暴走を抑える回路をブロックし、暴走を止めることができなくなり、やがて脳の神経細胞が死滅。その結果、引き起こされるのが、アルツハイマー病です。脳にとって、グルテンは敵でしかありません」
ジョコビッチは、成人になってから発症するグルテン過敏症だった。そうでない人もいつ発症するか分からない。
■子供の偏差値が上がった
それでは脳を守る食事とは、いったいどんなものか。重要なのは2つの油で、その1つがオメガ3脂肪酸だという。
「脳の細胞膜には、青魚に含まれるオメガ3脂肪酸が存在します。その濃度は、神経伝達に影響を与えるため、魚を多く食べる人ほど認知機能が高いのは複数の研究で明らかです。しかも、その効果は年齢を問わず、魚を多く食べる母の母乳で育った乳幼児が小学生になると、そうでない小学生に比べて成績が高いことも複数の研究で示されています」
脳のエネルギー源はブドウ糖と考えられてきたが、最近は脂肪の代謝産物・ケトン体こそ重要と考えられる。
「脳をはじめとする神経の接合部であるシナプスには、細胞内のエネルギー工場のミトコンドリアが集まっています。ケトン体は、そこに直接作用するため、ブドウ糖よりエネルギー効率が高い。脳の神経細胞のエネルギー不足解消にうってつけで、シナプスの機能低下の改善が期待できます」