Sydney Yajima


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チャイナリスク

2012-09-16 13:12:27 | 経済
現在、日本大使館がデモ隊に取り囲まれている。
トヨタの工場が焼き討ちにあい、日系ショッピングセンターが襲われ、日本人であるというだけで、あるいは日本車というだけで襲われる事態になっている。
この事態は、収束するかどうか?
という疑問が当然、多くの関心事となっているが、これは、拡大すると言っておく。
それも燎原の火のように、あるいは黄巾の乱のときのように、一気に人数が膨れ上がるだろう。
日本に向けて行われているデモではなく、中国経済の低迷が今後数年、すくなくとも向こう3年は続くことが確実で、そのことに耐え切れない人々が、暴発しているのである。
中国にとっては 残念だが非常によくないことだ。
理由は以下の通り

その1 多くの世界の投資家は、今の時代、より安全なところへ資金を避難させたがる。リスクがあれば、それを回避することにより熱心であり、あえて危険を冒してまで、逆張りをすることはしない。それは、愚かな行為だとさえ、言う投資家が増えた。もちろん、それは、心理的な理由を多く含んでいるとはいえ、EUリスク 米ドルのオーバーサプライリスクに加え、チャイナリスクが加わろうとしている現在、投資家が自己資金を守りに入るのは、当然の帰趨である。
世界の投資家たちは、今のデモを見て、月曜日から一気に中国からの資金を引き上げることを画策するだろう。
これは、すでに弱っている中国の体力を根こそぎ奪ってしまう効果を持つはずだ。
もともと、中国には無かった資本が海外の投資家によって、あるいはファンドや投機筋によって、中国に一方的に偏った方向で集まったのが、過去20年間の流れであった。
しかし、その資本の多くは、すでに取り付くした中国からの利潤を回収しようとしているか、あるいは 損益を減らそうとしているのかのいずれかにせよ 「永遠に」置いておける愚は冒さないはずだ。
そして、今回の暴動の成り行きはそのための重要なトリガー(引き金)になりうるということをまず、書いておく。


その2 日本の事業主は、すでにトレンドとなっている脱中国の流れを、さらに加速させるであろう。ビジネスを、中国で成功させるという流れは、1990年初めから、2008年のリーマンショックまで続いた。その間、様々なビジネスが中国を目指し、あるいは成功し、中には失敗をした人もいたが、おおむね 利潤を上げた。特に、製造業は 雪崩を打つように、安い労働賃金を求めて中国に進出した。だが、年率16%とも言われる中国のインフレとともに労働賃金の値上げは、製造業のメリットをどんどんと 奪ってしまい、2008年後のリーマンショック以降、物が売れない氷河期に入り、在庫を持つことを嫌がるようになった。実際、物が売れないという状況は、今も続いている。こんな中、最初にしたことは、リストラであり、そうすることによって、製造工場の延命を図ろうとした。だが、それはリストラをするほうの理論であり、リストラを受けた人々の怒りや僻みをケアすることにはならない。さらに中国国内で広がる格差は、その人々の生活をより苦しいものにしたし、苦しい人々は、リストラにあった日本企業を恨む結果となった。そのことが、今回の暴動をますます過激にさせていることを、認識しなければならない。しかし、このことが、同時に多くの事業を中国から撤退させることとつながるのであれば、実に皮肉な結果である。だが、事業というものは、利益が保障されて始めて成り立つ。今後、多くの製造業は、脱中国を行うであろうし、それが更なる失業率の増加となって、中国の経済の根本を奪ってしまうであろう。そうなると、中国は失業者のあふれる=お金の無い人々 だらけの国になってしまい、つまりはマーケットとしての魅力をさえ奪ってしまうことになるのである。このことは次に書く。

その3 その2の最後に少し書いたが、中国には、安い労働力というだけのメリットしかなかった。つまり、特別に技術を持っている集団がいるというわけでもなく、過去二十年に限って言えば、ラインワークでの安い賃金だけが、唯一の魅力であった。それに群がって安い賃金で働き手を農家から都市へと 多くの若者が殺到した。しかし、彼らが去った跡の農家は、すでに、忘れ去られた土地となった。ここで、気がついて欲しいことは、中国はもともと、農業立国だったのである。つまり、農業が経済の中心であったのだ。それもほんの20年前の話である。その農業経済が、工業製造経済へと 経った二十年の間に・・・つまり一世代で大変化を遂げたのである。しかもダイナミックに14億人の人々を道連れにして、一気に変わった・・・この意味するところは実に大きい。つまり、きちんと積み上げた技術やマネージメントをもとに、発展してきた経済ではなく、すべて外国からの借り物の衣装を着て踊っていただけなのだ。その衣装をはがれると、もともとの農民がそこに ぽつねん としているだけだ。派手に、外国の貸衣装で踊っているか踊っているフリをしているうちは・・・たとえ、その踊りが相当 マズイものであったにせよ・・・中国には、マーケットが14億人もの規模で存在するという幻想に多くの国々が、エキサイトしたとしても、彼らを責めるわけにはいかないだろう。実際、中国には多くの市場があるだろうと見込まれていたからだ。しかし、それは、17%の成長率を記録していると当局が発表している数字が、嘘であるにせよ信じたくなるほど、派手に踊っているうちだけの話なのである。もはや、メッキは剥がれ落ちようとしており、人々は、失業と失意と半ばやけくその中で暴動に加わろうとしているのである。暴動の民のなかに、マーケットの魅力を見出すことはとても、困難だ。

その4 この暴動は、さらに加速し大きくなっていくであろう。当局は、日本に対して弱腰外交となじられることをもっとも怖れている。できれば、日本に謝って尖閣諸島を手放して欲しいと願っているはずだ。だが、日本も、今は選挙を控えて腰の引けた外交と批判されることを怖れている。引くに引けないお互いの立場が、どこで折り合いをつけることができるのかは、とても難しい問題だ。永遠に続くであろう領土問題が、エスカレートするに従って、軍事的な台頭を呼び込むことになることは、想像に難くない。その結果、冷え込んだ経済と軍事の台頭は、ある時代のある国を思い起こさせる。そう、第二次世界大戦前のドイツだ。ヒトラー率いる労働党をナチスというが、ナチスというのは、恐ろしい名前でもなんでもない。正確には Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei(国家社会主義労働者党) と言い、まるで花畑にタンポポが咲いているような名前の略称がナチスなのである。中国の共産党が、いついかなるときに、軍事国家となり日本を占領することに野心を持つことになるかは、分からないのである。危機をあおるつもりはないが、今の中国の状況は、遅れてやってきた軍事政権の誕生前夜なのかもしれないとだけ、書いておく。その上で、日本として今後、どのような道を選択していくことが、もっとも安全なのかを考えてほしい。