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貝原益軒の養生訓―総論下―解説 032 (修正版)

2015-08-13 12:16:26 | 貝原益軒の養生訓 (修正版)
(原文)

一時の慾をこらへずして病を生じ、百年の身をあやまる。愚なるかな。長命をたもちて久しく安楽ならん事を願はゞ、慾をほしゐまゝにすべからず。慾をこらゆるは長命の基也。慾をほしゐまゝにするは短命の基也。恣なると忍ぶとは、是寿と夭とのわかるる所也。

易に曰、患を思ひ、予てこれを防ぐ。いふ意は後の患をおもひ、かねて其わざはひをふせぐべし。論語にも、人遠き慮なければ、必近きうれひあり、との玉へり。是皆、初に謹んで、終をたもつの意なり。

人、慾をほしゐまゝにして楽しむは、其楽しみいまだつきざる内に、はやくうれひ生ず。酒食色慾をほしゐまゝにして楽しむ内に、はやくたたりをなして苦しみ生ずるの類也。

(解説)

 「慾をほしゐまゝにすべからず」は「総論上」から何度も繰り返され、またこの後何度も繰り返されます。大切なことだからでしょう。

 「患を思ひ、予てこれを防ぐ」というのは、『易経』の、これは予言書でもあり哲学書でもある儒学の経典の一つですが、その中の既済の卦にある言葉。ちょっと確認してみましょう。

既済 亨ること小なり。貞しきに利ろし。初めは吉にして終わりは乱る。

象に曰く、既済は亨るとは、小なる者亨るなり。貞しきに利ろしとは剛柔ただしくして位当たればなり。初めは吉なりとは、柔中を得ればなり。終に止みて則ち乱る、其の道窮まるなり。

象に曰く、水の火上に在るは既済なり。君子以て患いを思い、予め之を防ぐ。

 既済の卦は、初めは良いが終わりが悪いというもので、君子であれば先を見越して予防しましょう、という内容です。予言書があるくらいなので運命は決定しているのだ、とついつい思ってしまいますが、未来は人間の知性と努力で変えることが出来るのです。

 「人遠き慮なければ、必近きうれひあり」は、『論語』衛靈公にある孔子の言葉。「一時の慾をこらへずして病を生じ、百年の身をあやまる」という益軒の言葉を対になって擁護しています。「一時の慾をこらへ」ないのは「遠慮」がないからなので、「愚なるかな」と言っているのです。

(ムガク)

(これは2011.3.16から2013.5.18までのブログの修正版です。文字化けなどまだおかしな箇所がありましたらお教えください)


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