はちみつブンブンのブログ(伝統・東洋医学の部屋・鍼灸・漢方・養生・江戸時代の医学・貝原益軒・本居宣長・徒然草・兼好法師)

伝統医学・東洋医学の部屋・鍼灸・漢方・養生・江戸時代の医学・貝原益軒・本居宣長・徒然草・兼好法師・・

貝原益軒の養生訓―総論下―解説 039 (修正版)

2015-10-28 19:29:09 | 貝原益軒の養生訓 (修正版)
(原文)

人に対して、喜び楽しみ甚ければ、気ひらけ過てへる。我ひとり居て、憂悲み多ければ、気むすぼほれてふさがる。へるとふさがるとは、元気の害なり。

心をしづかにしてさはがしくせず、ゆるやかにしてせまらず、気を和にしてあらくせず、言をすくなくして声を高くせず、高くわらはず、つねに心をよろこばしめて、みだりにいからず、悲をすくなくし、かへらざる事をくやまず、過あらば、一たびはわが身をせめて二度悔ず、只天命をやすんじてうれへず、是心気をやしなふ道なり。養生の士、かくのごとくなるべし。

(解説)

 喜びや悲しみなどの感情、心の状態と身体や気との関係は「貝原益軒の養生訓―総論上」でも述べられてきました。ここでちょっと医学書を紐解いてみましょう。それらについては『素問』挙痛論にある黄帝と岐伯の問答に記載があります。黄帝が岐伯に質問しました。

余は百病は気より生ずるを知るなり。

怒れば則ち気が上り、喜べば則ち気が緩み、悲しめば則ち気が消え、恐れば則ち気が下り、寒すれば則ち気が収まり、すれば則ち気が泄れ、驚すれば則ち気が乱れ、労すれば則ち気が耗し、思すれば則ち気が結す。九気は同じからず。何の病が之れ生ずるか。

 黄帝はさまざまな病気が気の状態に関係して発生することを知っていましたが、その具体的な関係や原因については分からないので、岐伯に質問したのです。そして岐伯が答えました。

怒れば則ち気は逆し、甚だしければ則ち血を嘔き、及び飧泄す。故に気が上るなり。
喜べば則ち気は和し、志は達し、栄衛は通利す。故に気は緩むなり。
悲しめば則ち心系は急し、肺は布し、葉は挙がり、而して上焦は通ぜす。栄衛は散らず。熱気は在中す。故に気は消ゆるなり。
恐れば則ち精は却き、却きれば則ち上焦は閉ず。閉じれば則ち気は還り、還れば則ち下焦は脹る。故に気は行らず。
寒すれば則ち腠理は閉ず。気は行らず。故に気は収まる。
すれば則ち腠理は開く、栄衛は通ず。汗は大いに泄る。故に気は泄る。
驚すれば則ち心は倚り所無く、神は帰る所無く、慮は定まる所無し。故に気は乱れる。
労すれば則ち喘息し汗出す。外内は皆、越す。故に気は耗す。
思すれば則ち心に存する所有りて、神は帰する所有り。正気は留りて行らず。故に気は結する。

 このように、岐伯は、怒り、喜び、悲しみ、恐れ、寒さ、暑さ、驚き、疲労、思慮などと身体や気の関係を黄帝に説明しました。ここに出てきた精や神、心、気、思、慮などは何でしょうか。岐伯は『霊枢』本神の中で、もう少し詳しく教えてくれます。黄帝が岐伯に質問しました。

凡そ刺之法は、必ず先づ神に本づく。血脉、営気、精神は、此れ五臓の蔵する所なり。其の淫泆に臓を離るるに至れば、則ち精失はれ、魂魄は飛揚し、志意は悗乱し、智慮の身より去るは何に因りて然るや。天の罪か、人の過ちか。何をか徳・気・生・精・神・魂・魄・心・意・志・思・智・慮と謂う。其の故を問わんと請う。

 それについて岐伯は答えます。

天の我に在るは徳なり。地の我に在るは気なり。徳流れ、気薄りて生じるなり。
故より生の来たるは、之れを精と謂う。両精相搏つ、之れを神という。
神に随いて往来するは、之れを魂と謂う。精に並びて出入するは、之れを魄と謂う。
物を任う所以は、之れを心と謂う。心は憶する所有り。之れを意と謂う。
意の存する所、之れを志と謂う。志に因りて変を存する、之れを思と謂う。
思に因りて遠慕す、之れを慮と謂う。慮に因りて物を処す。之れを智と謂う。
故に智者は之れを養生するなり。必ず四時に順いて寒暑に適し、喜怒を和して居処に安んず。陰陽を節し、剛柔を調う。是の如くならば則ち僻邪は至らず、長生久視ならん。
是の故に怵し思慮せば、則ち神を傷る。神傷れば則ち恐懼す。流淫して止まず。
悲哀に因りて中を動せば、竭絶して生を失う。
喜楽は、神を憚散させ蔵せず。愁憂は、気を閉塞させ行らせず・・・
 と述べ、「徳・気・生・精・神・魂・魄・心・意・志・思・智・慮」とは何なのか、身心とどのような関係があるかを明らかにしました。心のあり方、気の状態は身体に大きく影響を及ぼします。当ブログでは適宜読み下してありますが、これら『素問』や『霊枢』などの医学書は本来漢文で書かれています。益軒はそれらを一般の人々にも分かりやすいように、日本語に、しかも簡単にしたのです。

(ムガク)

(これは2011.3.16から2013.5.18までのブログの修正版です。文字化けなどまだおかしな箇所がありましたらお教えください)


最新の画像もっと見る

コメントを投稿