ひるがの高原から、国道 156号線をさらに南下していたら、左手に川が見えてきました。伊勢湾にそそぐ長良川です。
「いる、いる、太公望!」
この川は、鮎がたくさん釣れます。やがて右側に小さな駅舎が見えてきました。北濃駅(ほくのうえき)です。
●北濃駅
北濃駅は、旧国鉄越美南線の終着駅です。福井県を走る越美北線と結ぶ計画でしたが、結局、結ばれることはなく、民営化されて第三セクターの長良川鉄道になりました。
無人の駅舎から構内に入ってみると、
鉄路は、すぐそこで、途切れていました!
「雰囲気、ある~っ!」
振り返ると、
「がら~ん」
ホームに列車は入っていませんでした。
右の方に回ってみると、
「あった! 転車台」
これに機関車を載せて、ぐるっと回して機関車の向きを変えていました。今では、ほとんど見ることはありません。
そんなことを考えていたら、あることを思い出しました。
「そういえば、飲み鉄の六角精児が来ていたなぁ、ここに」
「そうだ、彼が訪れた酒蔵に行ってみよう!」
●布屋 原酒造場
北濃駅からさらに南下し、市街地に入ったところで、国道から東に一本、道を入りました。そこは郡上市白鳥(しろとり)の中心地です。
白鳥は江戸時代、越前から美濃を結ぶ美濃街道が走っていた交通の要衝です。現在でも、古い町並みが残っています。町並みを見ながら南下していくと、杉玉がつるされた立派な建物がありました。
「間違いない、ここだ!」
布屋 原(はら)酒造場といい、創業は1740年、8代将軍吉宗の元文(げんぶん)年間です。現在は、桜、つつじ、菊、月下美人などの花から、天然花酵母をとり出して日本酒を造っています。
中に入ると、
商品をケースに入れたまま置いてありました。
への次郎 「六角精児の『飲み鉄本線』を観て来ました」
店主 「昨日もおいでになりましたよ、福井から」
どうも昨日来た人は、六角精児がたどったルート沿いに、越美北線を乗り継いで来たようです。話を聞いたあと、六角精児が試飲したという日本酒3本を買って店を出ました。
再び国道にもどり、インターをめざしました。すると、交差点で横から国道にコンバインが入ってきました。人が歩くような遅さですよ。
「のどかだなぁ、奥美濃は」
このあたりは飛騨ではなく、奥美濃といいます。左右の田んぼを見ると、ちょうど稲刈りですよ。荘川では、見なかった光景です。
「秋だなぁ」
のどかな農村風景を見ながら、白鳥インターから東海北陸道に入りました。
●布屋で買ったお酒
ここのお酒は基本、辛口でした。
左は、桜から酵母をとった本醸造。柔らかなすっきりとした味わいでした。 中は、つつじから酵母をとった特別本醸造。左の本醸造より、華やかな味わいでした。 右は、すっきりとした飲み口の普通酒。六角精児が気に入ったそうです。
毎晩、冷やした三本を横一列に並べ、小さい盃で、ちびりちびりとやっています。
「ごくらく、ごくらく」