駄楽器駄日記(ドラム、パーカッション)

ロッキンローラーの打楽器日記

4日目のおでん

2006年02月07日 | グルメ
土曜日の夜のことだが、ものすごくおでんが食いたくなって作った。それはドラム教室の仕事から帰った後、食卓の上に味付け玉子の6個入りパックを見つけ、何となくおでんを想像してしまったからだ。外は寒くて熱燗が恋しくなっていた。かなり体は冷えてヤバイって感じだった。寝不足と疲労で風邪を引きそうな予感があったので、鍋物でも食って温まりたかった。早速冷蔵庫を見ると大根があった。練り物はなかったが、明日にでも買って追加すればいいやと、大根を輪切りにして、きちんと角を取って茹でた。糸蒟蒻があったので何本かを縛って小分けにして入れた。ダシはおでんの素があったのでそれをそのまま使った。味付け玉子は温めるだけでいいので、皮をむいて後で入れた。
とりあえず、土鍋でしばしぐつぐつと煮込んで大根と玉子を食してみた。まだ大根には、だしも沁みておらず旨くなるのはこれからだぞ、という自己主張を感じながらも新鮮な大根独特の風味を味わった。玉子は味付け玉子なので味は沁みていたが感動はなかった。これは失敗だった。こうなると、蒟蒻が食いたい。今回糸蒟蒻を入れてしまったが、オレの趣味ではなく食う気すら起きなかった。やはり板蒟蒻を三角になるように切って、おそ松君に出てくるチビ太が食うおでんの形にしなきゃいかんと思うのだ。
食いだすとイワシ玉も食いたいし、揚げ豆腐が食いたい。ちくわも食いたいし、ゲソや牛スジも。と、きりがなくなる。だが、ないものは仕方がないので諦めて寝た。生煮えの大根ひとつと味付け玉子ひとつで我慢した。
翌日、体調が悪かった。やはり風邪を引いたようだった。
でも、クリーニング屋にも行かなきゃならないし、ついでだからと無理をして買い物に出掛けた。
揚げ物や蒟蒻をたくさん仕入れてきた。それぞれ適当な大きさに切って土鍋に放り込んで煮込んだ。ぐつぐつと弱火で時間をかけて、けっこう豪華なおでんが出来上がった。我が家の夕食には一家で食べきれない量であった。
その頃、自分の体調は最悪になり気分が悪くなってきた。熱が出て食欲がなくなってしまった。ツイテナイー!せっかく作ったのにとお皿に盛ったおでんも、一口食うと気持ちが悪くてもどしそうになった。お皿のおでんは捨てられ、陽の目を見ることはなかった。
そんなオレが作ったおでんは、我が家では人気がなかった。いくら本当に美味しいとしても、誰も欲しがらないのである。かくして、土鍋の大盛りのおでんは、誰にも食べられないまま熱が冷め、食べごろが遠ざかり、放置されることとなった。
土曜日に作り出したおでんは、日曜、月曜と3日目を迎え、しかしまだほとんど手を付けられないまま残っていた。
昨日の夜、多少元気が出たオレは、責任を取って頑張って食った。正直言って味は最高だった。全ての具材に味が沁みていた。だがもう食いたい気持ちが萎えてしまっていた。こんなにも旨いのにオレはもう嫌になってしまったのだった。旨いものが美味しいと感じられなかったらそれはもう食えない。
だが、今日もなお、土鍋のおでんはオレの帰りを待っていてくれた。オレは腐ってもいない食い物を捨てることが出来ないようにできている。子供の頃、両親という貧乏な「お茶の水博士」がオレの食に関する脳回路に「もったいない」という常識をとことんインプットしたためだ。仕方なく、今夜も旬を過ぎたおでんを温めて、匂いをかいで食えることを確認しつつオレは晩飯にした。捨てることなく、たった一人、泣く泣く完食したが、もういらない。当分、こんなに旨いおでんは作らない。
コメント (6)
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