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在庫の絵から引っ張り出して、この絵を選択した。
タイトルは、切り株。
年輪は、年ごとの幸不幸を永きに渡り教えてくれる。
今日のタイトルは、「剥製師」です。
「ばあちゃんたちから予約があった」と、妻がカフェの玄関で待っていました。
そこへカブ(50cc原付自動車)が通り過ぎました。
そして、引き返してきました。
「替わりにじいちゃんが来た」と妻が笑っています。
老人は、大正15年(つまり、昭和元年)生まれの90歳と言われた。
特攻隊の生き残りだと笑っておられる。
耳が遠いのか、一方的に話される。
耳が遠い人は、幸せになれる。と誰かが言った。
その通りだと思った。
妻から話し相手を替わってとサインが出た。
私は、隣町のナンバーを付けた原付バイクを事前に見ていた。
老人のよもやま話が、一通り終わった頃、お名前はと聞いた。
年齢は、92歳と思われるがと聞いたら、90歳を過ぎてから数えるのを止めたと言われた。
老人は、テープで補修した補聴器を出されてイヤホンを耳にさされた。
やっと、会話をする気になられたようである。
もぞもぞと、腰に巻いたポーチのチャックを開け閉めされている。
財布らしきものを出されて、名刺を出された。
県・動植物保護サポーターと公タイトルがあった。
メインタイトルは、はく製師となっていた。私も名刺を出した。
しばし、はく製の仕事について話された。
動物をはく製にする場合、冷凍にして保存できないから終わるまでの作業となるらしい。
小さいもので一昼夜、大きいもので三日三晩となるとのこと。
だから、大きい動物の仕事は受けない。
はく製は、公的な機関からの依頼が多く、金に糸目は付けないとのこと。
最初の疑問、冷凍にできないという理由を聞いた。
肉は冷凍保存できるが、皮は冷凍すると組織が破壊されるとの解説であった。
試しに、熊のはく製の値段を聞いた。
一呼吸おいて、おごそかに30万円と答えられた。
案外安いのだと思った。でも三日三晩の報酬だから、真実味があった。
老人の名前は、この地域では珍しい名前であった。
この辺りにあった陣屋に、祖先は祐筆として勤務されていたと説明された。
納める代官の圧政に耐えかねて、一揆を首謀したのも先祖だとルーツを示された、
古文書の現代訳が入った封筒を自己紹介だと言って帰り際にいただいた。
特攻隊、はく製師、一揆と時代を行ったり来たりの話を聞いた。
老人は、妻が土産にと渡した「焼き立てのパン」を持って、悠然とカブで真の目的地に向かわれた。
方向指示器が出たままだがと心配したが、次の曲がり角で変更された。
徘徊のカブ版と思い心配した。
老人に悪いことをした。
きっと、また来てくださるだろう。
年取らぬ 数えるやめて 悠然と
2018年7月2日